バロック覚え書き of 上町台地の地域情報紙『うえまち』

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うえまちコンサート運営委員会だより
中野順哉のバロック覚え書き

page② バッハの名曲で大阪の名を世界に
2015年4月号

 今年はバッハの生誕330年にあたる。今でこそバッハは「音楽の父」としてあがめられる存在だが、バロック時代の人々はそこまで彼を特別視してはいなかった。オルガンの名手であり、同時に家庭を愛する教育熱心な人。息子たちのために素晴らしい練習曲を作曲するなど、一生懸命でありつつ、ちょっと地味な「お父さん」だ。その成果あってか当時一般に  「バッハ」と言えば成功者である次男を指したとも言われている。
 さて、バッハの代名詞的な作品の一つに「ブランデンブルク協奏曲」がある。一説では給料の良いブランデンブルク辺境伯のもとに転職したいがため、自身のPRとして捧げた曲集だったとも。頑張るお父さんの「就活」というところか。「そうかもしれない」と思わせるほどアイディアに満ちている。
 史上初のチェンバロ協奏曲といわれる第5番のほか、トランペットの妙技が魅力の第2番、リコーダーの活躍する第4番、特殊な弦楽器の登場する第6番など、どの曲を取り上げても 見事なひらめきの連続だ。この全曲を毎年演奏する団体は世界的にも稀有(けう)らしい。
 そこで「テレマン」は毎年、中之島の大阪市中央公会堂で全曲演奏することで、大阪を「この名曲と出会える都市」として海外に発信したいと考えている。ブランデンブルク州の首相に その決意を手紙で送ったところ、首相より歓迎のメッセージが届いた(第1回目は4月13日)。民間による都市の国際発信。これぞテレマン流「真田の本陣突破」――。
ということで、4月の「うえまちコンサート」について。毎回「歴史」がテーマの4月公演。今回は「大坂の陣」と真田幸村。こちらはバッハとは逆で、当時「真田」と言えば何といっても父・昌幸。ほぼ無名であった幸村を一躍ヒーローにしたのはこの合戦。
 「OSAKAの名を世界に」と野望を抱く「テレマン」も幸村にあやかって、この日ばかりは赤備えでいざ出陣。学芸員トークもあり。お楽しみに。

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 中野 順哉(なかの・じゅんや)
 作家。日本テレマン協会代表。小説を阿部牧郎、浄瑠璃台本を七世鶴澤寛治の各氏に師事。創作講談と音楽とのコラボレーションをプロデュースしながら文化振興に努めている。現代社会における文化の使命、文化による「大阪の国際発信」などを追求。2014年関西学院大学と包括協定を締結。

page① 大阪で育まれた異国のバロック 2015年1月号

 知っているつもりで、違いがよく分からないのが「室内楽」と「バロック音楽」。語弊を恐れずに言えば「室内楽」とはオーケストラと違って、少人数で奏でる音楽のことを示します。もともとは宮廷で演奏されていた音楽を意味していたとも。
 一方、宮廷文化の華やかな時代の音楽といえば「バロック音楽」が代名詞。ということで、この2つの言葉は時に同義語のような使われ方をするようですね。
 さて「うえまちコンサート」は「室内楽≒バロック音楽」ばかりで構成されています。どうしてでしょう? それは、「室内楽が大阪文化の一つ」だと考えているからです。 
 日本テレマン協会ができた1960年代。東京にもいくつかの室内楽団が発足しました。現在そのほとんどが消滅するか、活動らしい活動をしていません。大阪の「テレマン」だけが残ったのです。これは紛れもなく大阪人の力。先日、テレマン協会は冊子「私の見た大阪文化」を刊行したのですが、その取材にあたり新たに見えてきたことがありました。それは、  大阪文化は舞台からの発信だけではなく、お客さんのイマジネーションとのアンサンブルで培われたものだということ。文楽しかり、食しかり、ものづくりしかり―。口うるさいながらも育ててやろう、という気概のある大阪の人々…室内楽もそういった空気の中で育まれてきたのです。
 おかげで、異国の文化だったバロック音楽は、大阪で培われ「大阪のバロック」として生まれ変わっているのです。そんな大阪の良さを、そこに住みながら再認識し、共有する。それが「うえまちコンサート」です。
 次回は1月。会場は山本能楽堂で、延原武春と「テレマン」の首席奏者によるカルテットの共演。そして「海ゆかば」の作曲家としても有名な信時潔の「沙羅」を、期待の新人高曲伸和が歌って舞うという異色の内容です。「うえまち」ならではの文化を、一緒に育んでみませんか。

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 中野 順哉(なかの・じゅんや)
 作家。日本テレマン協会代表。小説を阿部牧郎、浄瑠璃台本を七世鶴澤寛治の各氏に師事。創作講談と音楽とのコラボレーションをプロデュースしながら文化振興に努めている。現代社会における文化の使命、文化による「大阪の国際発信」などを追求。2014年関西学院大学と包括協定を締結。

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