うえまちインタビュー of 上町台地の地域情報紙『うえまち』

うえまちインタビュー

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柏木陸照・中央区長インタビュー
世界に魅力を情報発信 「来て良かった」まちへ        2016年6月号

1606柏木区長.jpg      かしわぎ・みちてる       1969年生まれ。京都大法学部卒業後、三菱商事、ブリヂストン、デンソーと日本の民間企業に約20年勤務。海外駐在が長く、区長就任直前まではモスクワ駐在。デンソー現地企業の社長として組織を束ねていた。趣味は読書、散策、水泳など。 2012年9月の就任からまもなく4年。民間出身で海外ビジネスの豊富な経験を生かし、経営者の発想で区政運営に取り組む柏木陸照区長。その戦略を聞きました。

 ――区役所の仕事、役割とは。
 大阪のど真ん中の中央区には大きく分けて2つの役割があります。1つ目は区民の皆さまから「住んで良かった」と思ってもらえるまちづくり。教育や福祉に加え、防犯・防災など安心・安全に暮らせる地域インフラを整えることが基本です。
 2つ目は国の内外を問わず、仕事、買い物、観光でいらっしゃる来街者に「来て良かった」と思ってもらえる「にぎわい創出」の役割です。

 ――繁華街や歴史的遺産を多く抱える中央区では近年、人口が急増しています。また外国人も増えている印象がありますが。
 中央区は大阪市の税収の4分の1を稼ぎ、「大阪全体のけん引役」を担う区です。加えて人口増加率も、ここ5年で18・2%と市内トップ。全国の政令市の行政区の中でもトップクラスの成長を遂げています。また外国人観光客は720万人と大阪の魅力と注目度は、世界的に見て極めて高いものがあります。
 大勢の人に来てもらい、住んでもらい、まちの魅力を継承しながら、経済を活性化させ大阪全体の盛り上げにつなげる。そのことを常に念頭に置いた区政運営が必要だと感じています。
船場地域においては江戸期以降の歴史や上方文化の再発見をテーマに区役所もさまざまな企画に取り組んでいます。またミナミにおいても活発な商店会と連携し、来街者のさらなる増加と、より多様な地域や国籍の方にも来てもらえるよう取り組んでいます。

 ――就任後、取り組まれたことは。
 区役所内に「規律の文化」を浸透させるため組織マネジメントの強化に徹底して取り組みました。また行政業務を公共サービス業、コンサルティング業としてとらえ直し、さまざまな改革に着手。一部を紹介しますと、区広報紙、ツイッター、公式ウェブサイトに加え、中央区では独自に観光情報に特化したウェブサイト「大阪中心」があります。
 就任当初はできて間もないサイトでした。このコンテンツ拡充と多言語化を進め、観光情報だけでなく地域情報などをきめ細かく発信することで、アクセス数は月3000件から3万件と10倍に。特に東南アジアの方がよく見るフェイスブックは、行政系では全国でも有数の4万「いいね」を獲得。リンクを生かし、元情報がさらに拡散する仕掛けも行いました。まちの〝顧客〟である来街者を今後も継続して獲得してまいります。
 サイトの運営は地元商店会や経済団体などで構成された実行委員会。区は財源だけでなく、しっかり口も出しており、官民一体のプロジェクトで取り組んでいます。

 ――区政運営を通して感じたことは。
 中央区は歴史の遺産が豊富です。大化の改新の後、律令国家としてスタートした難波宮。豊臣秀吉の天下統一の舞台となった大阪城。江戸期には経済の中心地「天下の台所」。明治大正期には「東洋のマンチェスター」と言われ「大大阪」の黄金期。いずれの時代にも、歴史舞台の中心であり続けました。
 昨今、大阪創業の企業が、東京に出ていくことがマイナス視されています。その見方は確かに謙虚と言えば謙虚なのですが、一方、その企業の原点が大阪であったことを、もっと堂々と誇るべきだとも思います。また、江戸期の信用を大切にする商慣習、丁稚(でっち)から番頭に至る人事制度、社員教育制度は、現在の日本のビジネス慣習にも大きく影響しています。その結果、日本を世界トップクラスの経済大国へ押し上げている。大阪の商い文化、商習慣が大阪にとどまらず、日本全体や世界に  広がり続けている事に誇りと自信を持ちたいと思います。
 その上で中央区に「来て良かった」というまちづくりの取り組みを、企業や商店の発展につなげ、最終的にはその利益が住民の福祉・教育・防災・防犯に還元され、「住んで良かった」まちを創る。『うえまち』の読者の皆さまと一緒に、誇りをもって、この中央区から大阪復権に向け取り組めること、何よりも楽しみにしております。

2015年ミス愛染娘 羽田優里奈さん
祭りの華「愛染娘」で成長実感 2016年6月号

1606羽田さんプロフ.jpg        はだ・ゆりな         大阪芸術大放送学科3回生。愛染娘の経験を生かし、今宮戎神社の福娘や天神祭の花娘にも参加。神戸のテレビ局「サンテレビ」で番組アシスタントとして活躍中。 愛染まつりのPR役として、華やかに祭りを彩る愛染娘。2015年ミス愛染娘に選ばれた羽田優里奈さんに、祭りや愛染娘の魅力などについて聞いてみました。                    (聞き手は西坂友秀編集長)

 ――愛染まつりはどんなお祭りですか。
 夏に向けてはやる病気をはらい落とし、健康に過ごせるよう「夏越の祓え」の大法要で無病息災を祈願するお祭りです。 
 本尊・愛染明王と大日大勝金剛尊の特別開帳、愛染娘の宝恵かごパレードなどがあります。夕方からは境内周辺に約300店の露店が軒を連ね、大変なにぎわいです。
 また、愛染まつりの日に浴衣を下ろす風習から、「浴衣まつり」とも呼ばれています。
 毎日午後6時以降に浴衣で訪れた先着100名の方には、かわいい数珠ブレスレットのプレゼントがあります。せっかくの「浴衣まつり」です。浴衣を着て、ブレスレットを付けて楽しんでいただきたいです。男性も浴衣を着ていればもらえます。
 ――恋愛のご利益はありますか。
 愛染堂のご本尊様は愛染明王といって愛敬開運、良縁成就の功徳があると信仰されてきた仏様で、愛染まつりは愛染明王の大縁日にあたり、特別にお姿がご開帳されます。また、「愛染ぱらぱら」という言い伝えもあります。3日間の祭りの期間中、必ず1日は小雨が降ると言われており、その雨に当たったカップルや1606羽田さんと編集長.jpg愛染堂勝鬘院で恋人は結ばれるというものです。雨でもドキドキできるので、お相手を誘ってみては。昨年も降りましたよ。
 ――愛染娘に応募したきっかけは。
 大阪芸術大学に通っています。応募したのは教授の薦めがきっかけです。
 日本文化が好きで、一人で京都などへ神社仏閣巡りに出かけるのが趣味。かねてから、神社やお寺でご奉仕できる機会があればと思っていたので、愛染娘はよい巡り合わせでした。浴衣を頂けるのも魅力でした。
 ――愛染娘はどんなお仕事をするのですか。
 祭りの前には、広報大使として浴衣姿でマスコミや大阪市庁などを表敬訪問し、愛染まつりをPRします。当日は「宝恵かご」に乗り谷町筋でのパレードに参加するほか、境内で授与品の販売などを行います。
 ――宝恵かごの乗り心地はいかがでしたか。
 約1・5㎞のパレードの間は、ディズニーランドの「ミッキーマウス」の気分。かごから身を乗り出し、沿道の皆さんに笑顔で手を振りました。
羽田さん1.jpg しかし、かごに乗るのは結構体力が要ります。パレ―ドが境内に着くと愛染娘全員のかご上げが行われるのですが、担ぎ手が「わっしょいわっしょい」とかごを揺らすたびに、必死につかまっていなくてはなりませんでした。
 覚えているのは、担ぎ手への「頑張れ」の声援が響いていたことと、境内を埋め尽くす人の波、祭りの熱気。この日、一生分のカメラのシャッターを浴びました。貴重な体験だったと思います。
 ――ミス愛染娘コンテストではどんなことを披露したのですか。
 「笑顔つながる愛染さん」という人と人とのつながりをテーマに、大きな紙芝居を作り発表しました。
 お祭りに足を運んでくださる人たちへ、「私も皆さんから笑顔をもらっていますよ」という感謝の気持ちを伝えるオリジナルストーリーです。そこでしかできないこと、愛染まつりに関係することをやろうと思い、夜なべで制作しました。
 ――今年の愛染娘にアドバイスを。
 私は愛染娘がきっかけで、「次も色んなことにチャレンジしよう」と一歩前へ踏み出せました。新しい仲間もでき、自分の成長を実感することもできました。 「笑顔を忘れず」が愛染娘の条件ですが、これはどんな場面でも大切なこと。今年の愛染娘の皆さんも、お祭りに 来てくださる人へ素敵な笑顔で接することができれば、立派な〝祭りの華〟となるのではないでしょうか。

愛染まつり.jpg

西山忠邦・天王寺区長インタビュー                   2016年5月号

「自分たちのまちつくるお手伝い」

1605西山区長.jpg     にしやま・ただくに       1959年生まれ。同志社大学商学部卒業後、82年に大阪市採用。建設局に20年間勤務した。庶務課を中心に計理、庶務、総務局人事課などを経て2005年から市政改革担当部長、行財政改革担当部長などを務め市民協働をベースにした市政改革プランを手がけた。11年12月から政策企画室理事。 4月に新しく天王寺区長となった西山忠邦氏にインタビューを行い、抱負や今後の区政運営について聞きました。

 ――区役所のポジション、役割とは。
 市民の皆さんにいかに気持ちよく地域活動に取り組んでいただけるか。区役所はいわばコーディネーター。皆さんの意見に丁寧に耳を傾け、その調整役でありたいと考えています。
 大阪市役所で市政改革に携わっていた際に、地元の方の意見を聞く機会が多くありました。そのとき強く感じたのは、市も区も組織が縦割りであるために「うちの仕事はここまで」と組織の間に線引きがあること。これはとても残念なことです。物事がスムーズに回るよう区役所が間に立ち、この隙間を埋める努力を重ねたいと思います。
 ――どんなまちが理想ですか。
 安心して暮らせる安全なまちであることが大前提です。それに加えて「行ってみたい、住んでみたい」と思われるようなまちを目指したい。
 周辺の一部の区では人口が減り、空き家が増えて人のつながりが希薄になっていると聞きます。人と人の間を結び付けることができれば、つながりや絆が生まれるはず。区役所の存在が、その一助になればと思っています。
 子ども・子育て世代が多いのが天王寺区の特性です。子育て支援や子どもの安全を守る取組みや、高齢者や障がい者を守る施策にも力を入れます。
 ――新区長への期待・要望がある中で、区長から市民に期待することはありますか。
 「自分が望むまちにしていく」という気概を市民一人一人が持つことです。それはまちづくりにおいて大きな力となるでしょう。
 例えば公園の管理。自分たちが毎日使っている公園だから交代で掃除しようかとか。遊具の配置には市の一律の規定があるのですが、「遊具はやめて芝生にしてほしい」とか「花壇を作ってくれたら自分たちで管理するから」という声がもっとあればいい。自分たちの公園として管理するんだという強い思いがあれば、私たちも市と掛け合い、公園を地域に お返しします。
 地域のために何ができるか。自分たちのこととして考え、行動する。これが市民の皆さんに期待することです。私たち区役所も一緒に汗を流すつもりです。
 ――上町台地というエリアにどんな印象をお持ちですか。
 父が天王寺区出身で、幼い頃からよく話を聞いていました。こうして区長を務めることになったのも、何かのご縁を感じます。
 まずは区内をくまなく歩き、自分の目でまちを見て考えたい。天王寺区のいいところ、魅力的なところを生かしながら、まちがさらに住みよくなるよう、まちづくりを進めてまいります。

大槻能楽堂 大槻文蔵師
能の世界に人の営み重ね                          2016年4月号

大槻能楽堂 4月から新「能の魅力を探るシリーズ」

悠久の歴史の中で人々はこれらの世界をどう生きてきたのだろうか

1604大槻文藏師.jpg 大槻能楽堂は4月から、1年間通して上演する自主公演能「能の魅力を探るシリーズ」を装い新たにスタートさせる。タイトルは「悠久の歴史の中で人々はこれらの世界をどう生きてきたのだろうか」。時代を超えた壮大なテーマに能の世界観を重ね、人間の営みについて考える。文蔵師インタビュー.jpg
        ◇
 「長い歴史の中で、人はさまざまなことを経験しながら生きてきた。幸せなことばかりではなく、過酷な人生や悲運な人生もあったかもしれないが、生きていく中で自分以外のものとどう関わりを持ってきたのか。作品を通して考えたい」と話すのは、シリーズを企画した大槻文藏師。
 「人間の営みが続く限り、普遍的に存在するもの」として、「神と自然と人」「罪と罰」「知性と孤独」「邪と悪と激」の4つをテーマに掲げ、全12作品を組んだ。自分の人生を懸命に生きる登場人物たちの生きざまと、彼らが「人以外のものにどう対峙(たいじ)してきたか」(大槻師)が際立つ作品ばかりだ。
 4月23日(土)上演の「小鍛冶(こかじ)」は、「神々との交流」がテーマ。
 ある夜、帝が不思議な夢を見て、刀工として名のある京都・三条の小鍛冶宗近に御剣(みつるぎ)を打つよう命じる。しかし、宗近一人で御剣を打つことはできない。自分と同等の技量の相づちを打つ者がおらず、途方に暮れた宗近は、稲荷山の明神へ祈願に出かける。
 最後は稲荷山明神が宗近を手助けするという結末だが、大槻師は「信仰とはどういうものか。神が目に見えない形でどのように人を助けてくれているか。改めて見つめ直したい」という。
 能には神や魔物、動植物の精など人間を超越した存在のものたちが多く登場する。だが、現代に生きる私たちもそれらと無縁ではない。「山や海が好きな方、春は桜、秋は紅葉を愛で、正月には神社に参るという方も多いと思う。皆さんお忙しい中にもそれぞれ求めるものがある。それ自体が自然と関わっているわけです。逆にそういうものなしにあなたは生きていけますかと問うてもいる。身近なものとして、いかにお客さんに〝思い〟を共有していただけるか」。
 緞帳(どんちょう)で客席と舞台が分かれている通常の舞台と異なり、能舞台は客席に突き出し観客が舞台の二方を取り囲む独特の空間になっている。「お客さんと舞台が一体となるようにできている」と大槻師。能は理解しようとするものではなく、心で感じるものといい、 「能動的に舞台に働きかけていただきたい。演者の力量とお客さんの豊かな感性で一つの作品になります。500人のお客さんがいれば500通りのものができる。そこがプレゼント.jpg能の面白さです」と語った。
 開演は午後2時。入場料は一般4800円、学生3100円。
 ▽大槻能楽堂=中央区上町A‐7、電話06・6761・8055

近鉄百貨店上本町店 バイヤー
中岡 大佳                                 2016年4月号

「北海道大物産展」 近鉄百貨店 上本町店 3月31日(木)~4月5日(火)

春休み ご家族でどうぞ

1604近鉄北海道展 バイヤーさん.jpg 3月31日(木)から近鉄百貨店上本町店で始まる北海道大物産展。バイヤーの中岡大佳さんにお薦めを聞きました。
    ◇
DDDSB_A05.jpg 春の行楽シーズンと春休みが重なり、今回はご家族で楽しんでいただけるもの、行楽にテークアウトしていただけるものを多くご用意しています。
 ウニ、イクラ、ホタテなど海産物たっぷりの海鮮弁当、道産牛のステーキ重など、春のお出かけにお持ちいただきたいお弁当を豊富にそろえました。
 お子さんが大好きなイチゴのスイーツも特集しています。札幌市「桃花堂」からは、スイートポテトにイチゴをプラスした、当店だけでお求めいただけるオリジナル商品「ストロベリーレアスイートポテルト」。甘みとイチゴの酸味が爽やかです。ちょっとしたお土産にもどうぞ。ラーメン.jpg
 今回の私の一押しは、食パンとラーメンです。高級食パンブームで、近隣のお客さんも美味しい食パンを求められています。そこで、北海道産の小麦と生クリームを使ったリッチな食パンを会場で焼き、ご提供することにしました。
 北斗市の「ジョリ・ジュワ・ジョイス」が出店します。焼きたての「生クリームミルク食パン」をぜひ味わってください。生で食べるのがお薦めです。もちもちで甘みがあり、小麦の味と香りがより伝わります。各日午前10時、午後1時、午後4時に焼き立てを販売します。(各回 限定12本、1人1本限り)
 イートインでご提供する札幌市「らぁめん道場黒帯」の「味噌らぁめん」は、20種類のスパイスと味噌をブレンドした店主自慢の味噌ダレが決め手。味わい深い味噌、チャーシューなど全ての食材にこだわり抜いた北海道でも人気を誇るラーメンです。
 春休みの6日間、ご家族おそろいでぜひ会場へお越しください。

<特別取材「塾」> 失敗しない学習塾選び
塾選びのポイントと中学受験対策                   2016年2月号

高校・大学入試改革が与える影響

 2016年度から大阪府公立高校の入試制度が大きく変わる。大学入試も20年度から「大学入試センター試験」が廃止され、新たな制度が導入される予定だ。そこで 大手学習塾と、学習塾のポータルサイト№1の「塾ナビ」の担当者に、今後の入試対策と塾選びのコツを聞いた。

塾ナビ.jpg■公立高校入試の変更点
 大阪府では次年度より、従来の前・後期日程の選抜から、「一般選抜」へ原則一本化される。
 大手学習塾A塾の進路指導担当者によると、「一般選抜の1回しかチャンスがなく、受験生にとっては慎重な受験校選択を迫られることになる」という。「また入試科目が5教科に統一され、理社が苦手な生徒にとっては厳しい入試になるだろう」と話す。「各高校が策定するアドミッションポリシーに沿った自己申告書の提出が義務化。内申書(評定)も、相対 評価から絶対評価に変更されるなど、中学生の志望校選択に大きく影響する」という。
 ■センター試験廃止の影響
 大学入試は、2020年度から「大学入試センター試験」が廃止され、代わりに2段階の「到達度テスト」が実施されると見込まれている。これを受けて、学力の仕上がりが早い中高 一貫校への受験を望む保護者の声も多く聞く。
 大手個別指導塾B塾の教室長は、「新制度では、知識の活用力や思考力をみる新テスト導入など、脱・知識偏重が色濃い。勉強は入試のためではなく、何かを成し遂げるためのもの。目的を見据え、生徒が自主的に勉強に取り組むよう指導している」と主体的に学ぶ姿勢の重要性を強調する。
 ■中学受験塾を見極める力とは
 一般に中学受験の準備が始まるのは小学3年生の2月。ブランド名だけで塾を選ぶと、子どもの性格と塾の方針にミスマッチが生じ、失敗するケースが多い。
 先のB塾教室長は「塾は勉強のノウハウを教えるところで、能力が伸びるかどうかは本人次第。子どもが自ら伸びる環境として適している塾を選ぶべき」と話す。「そのためには子どもの性格をしっかり見極めること。学習面では計算力・暗記力・集中力の持続、性格面では気が強いか否かといった点で、どの塾と相性がいいかが大まかに分かれる」という。
 「中学受験は親の受験というように、親のサポートなしではうまくいかない。保護者と塾の役割を明確にし、二人三脚で子どもをサポートする。それが中学受験の理想の形」だそうだ。
 ■塾選びのポイント
塾資料プレゼント.jpg 学習塾のポータルサイト「塾ナビ」を運営する株式会社イトクロ・塾ナビ担当の野村さんによると、「最近の傾向として、お子さまの学力と目標や目的、かけられる時間数などが一人 一人異なり、それに対応してくれる個別塾のニーズは増加傾向にある」という。供給側の個別塾も、カリキュラムや指導形態が多様化してきている。
 塾を選ぶポイントとして、「目的に合う複数の塾をピックアップして資料請求を行い、実際子どもと一緒に教室見学や体験授業などを通じて、本人の意思を確認するのが良い」と話す。保護者には「学習塾での見学会や面談の際に、合格率・指導内容のほかに、成績向上につながる学習意欲の向上への取り組みなども併せて、確認することを薦める」ということだ。

取材協力 : 大手学習塾各社・塾ナビ

近鉄百貨店上本町店 食料品科
中野 優                            2016年2月号

ショコラコレクション.jpg

 一粒ごとに趣向を凝らし、芸術品のように美しいチョコレートの数々。近年自分へのご褒美として購入する「自分チョコ」の需要が増え、少し背伸びした価格帯の商品が売れています。女性の心をつかむブランドの選定に昨年5月から動き出したという食料品課の中野優さんに話を聞きました。
■ ■ ■ ■ ■
 「上本町店に人気のブランドを多数呼んで、お客様にチョコレートのファンになってほしい」そんな思いで例年よりも早く交渉を始めました。今回出店が決まったベルギー大使館推奨の  「レーヴ・ドゥ・ビジュー」(写真)もその一つ。全国の百貨店から引き合いが多く競争率が高いブランドです。当初断られましたが、一番乗りで印象に残っていただけたようで急きょ昨年末に出店が決まりました。ここのチョコレートは口に入れた時のカカオの風味の広がり方が格別です。ぜひ高級チョコレートの味わいを堪能していただきたい。頑張っている自分へのご 褒美としてゆったりとした気分で楽しんでもらえたらうれしいです。
 一方で東京・渋谷にお店がある若者に人気の 「DECOチョコ」。チロルチョコレートのパッケージにオリジナルのメッセージやデザインが施されているユニークな商品です。当店の近隣には学校や進学塾が多く、受験生への応援メッセージなどでご利用いただけるのではと選定しました。関西での出店は当店とあべのハルカス近鉄本店のみです。
 昨年のイベントでお声の多かった「会場でもチョコレートを食べたい」という要望にお応えし、2月4日(木)からは、ベルギー王室御用達の「レオニダス」のチョコレートをふんだんに使った濃厚な味わいのソフトクリームもご用意しました。
 私自身「スイーツ男子」で甘い物に目がありません。多忙で疲れたときの一粒のチョコレートは元気の源です。女性で熱を帯びる会場ですが、ぜひ甘い物好きの男性にも足を運んでいただきたいですね。

<特別取材「介護」> 介護現場のいま
田中 宏一                                2016年1月号

プロ意識で質の高いサービスを

 高齢者人口の増加を背景に需要がますます拡大している介護業界。利益重視で参入した事業者は淘汰(とうた)され、サービスの質が問われる時代が本格的に始まろうとしています。
 「過酷な労働で低賃金というイメージが先行している介護業界ですが、職員は志が高く明るい職場です」と話すのは、大阪・和歌山で介護事業を運営する天王寺区在住の田中宏一さん。
 介護現場の実情と今後の展望を聞きました。

1601田中君.jpg       田中 宏一氏           天王寺区在住。株式会社MAXSEVEN代表取締役。枚方市で訪問介護事業「なないろ」、和歌山県で有料老人ホーム「和みの里」、デイサービス「ほほえみの里」などを運営。そのノウハウを生かし介護福祉専門のコンサルティング事業も行っている。  ■介護現場のいま
 当社は、有料老人ホーム、デイサービス、訪問介護、福祉用具レンタルなど介護事業全般を行っています。全グループで職員は80名。8割が女性で40歳以上の方が多く、「人と関わることが好き」「人のお役に立ちたい」という使命感と熱意にあふれています。
 介護の現場には皆さんが抱かれているようなイメージはありません。寝たきりのお年寄りの身体介助は確かに重労働ですが、技術やコツを身に付けることで負担を減らせます。 職員は笑顔で明るく仕事をしています。勉強熱心で志が高く、質の高いサービスを提供できるよう日々努めています。
 話し相手になることも仕事の一つです。独り暮らしの高齢者が増え、訪問介護では「語りかけ」が重要です。いろんなお話を聞かせていただきますが、人生経験豊富なご老人の達 観された話に、なるほどと教えられたり昔話に癒やされたり。改めて介護はその方の「人生そのもの」「命」に関わる仕事をしているのだと感じます。

 ■利用者と家族、双方に喜ばれるために
 少子高齢化で、親の面倒を見たいけれど物理的に難しく、後ろめたい思いを抱えながら見学に来られる方が大半です。そういう時は「施設に入られても、来所してお世話することができますよ」と伝えます。
 老人ホームは24時間スタッフが見守りますので、何かあれば迅速に対応できます。同年代の方々とのふれあいもあり、入居を渋っておられた方もいざ入居されると「過ごしやすい」「楽しい」と言われます。それを聞いてご家族もほっと胸をなでおろされます。
 人生最後のひとときを安心して過ごしていただけるよう、ご本人とご家族双方が納得できる場を提供することが私たちの使命です。
 そのためにはサービスの質の向上が重要になってきます。職員には「無理をせず、一つ一つの仕事を丁寧に」と伝えています。熱意がありすぎてついつい頑張りすぎてしまう職員も多いのですが、それでは長続きしません。言葉遣いや行動にプロ意識を持ち、技術を高め、より長く勤めて経験を積んでこそ、利用者さまに質の高いサービスが提供できると考えます。

 ■若い方にこそチャンス
 介護業界の一番の課題は人材不足です。一口に介護と言っても、介護福祉士、ヘルパー、リハビリ担当などさまざまな資格を持った専門職が連携して働いています。
 また現場の介助や介護だけでなく、ITを利用した見守りサービスや、介護ロボットの開発、給食の宅配事業などさまざまな分野が集約され、若い人の独創的なアイデアが生かせる分野です。
 業界の一面的なイメージで判断せず、アイデアや努力次第でチャンスが広がるこの業界で、若い方と一緒に汗を流せたらうれしいです。

取材協力
株式会社MAXSEVEN
中央区安土町2‐5‐5 本町明大ビル5階
電話06・4708・5787

近鉄百貨店 上本町店 バイヤー
八木 晃 さん                2015年11月号

北海道大物産展 バイヤー八木さんの一押し
1511近鉄バイヤー八木さん.jpg 「食べれば物事が動く」をモットーに、良い返事がもらえなくてもひたすら店に足を運び、食べる、また食べる。そして一店一店思いを伝え、お客様に喜んでいただける「味」をご提供いただく。それが私の使命です。北海道大物産展で毎回人気のイートイン。現地の味の再現にかたくなにこだわりました。
 1週目は関西初出店のラーメン店「コクミンショクドウ」が登場します。スープの上品さが際立つ生しょうゆと濃い目の味噌、どちらもおすすめです。北海道ラーメンランキングで上位を 誇る話題の味をぜひお召し上がりください。
 すしは北海道の人気店「ふじ鮨」。絶妙な味付けの鶏の半身揚げとすしのセットは、小樽では一般的なメニュー。目新しいこの組み合わせが数量限定で実現しました。
 イートイン以外では、カニの炙りとボイルを両方味わえるぜいたくな上本町店オリジナルの海鮮弁当や、「ロイズ」のミルクチョコを使用した堂島ロールとのコラボ商品も。今回は特別に大阪で製造したできたてを30日(金)・31日(土)各日正午から限定販売します。
 2週目は、「富蔵」と「橙ヤ(だいだいや)」の2つのラーメン店が出店。すしは「朝市すずや食堂」が、人気の海鮮丼と同展では珍しい定食メニュー「銀ダラ味噌焼き定食」の2種類を提供します。日替わりで楽しめる豊富なメニューも自慢です。期間中、昼ごはんは当店でいかがでしょうか。
 上本町店は地域密着型の百貨店。毎日ご来店くださるお客様にも満足していただけると自負しています。私も会場におります。ぜひ気軽にお声がけください。

近鉄百貨店 上本町店長
久保 俊雄 さん                2015年9月号

毎日足を運びたくなる店に
1509久保店長.jpg       くぼ・としお                    1983年大阪市立大学商学部を卒業し、近鉄百貨店入社。入社後3年間の外商活動を経て販促部門を担当。1989年から「ならファミリー」の建て替え工事に参画。2005年、阿倍野本店に販売推進部長として着任、ハルカスの開設事業に携わった。 「百貨店は地域に密着していることが大事。地元のお客様のニーズをくみながら、『毎日でも来たい』と思っていただけるような店を目指します」―。あべのハルカス近鉄本店副本店長から、5月28日付で上本町店長に就任した。
 上町台地のほぼ中心に位置する上本町店。キタ・ミナミ・アベノに挟まれ、一日の乗降客数が約7万人規模の駅に、約3万㎡もの売り場面積をもつ百貨店がある同店のようなケースは全国でも珍しいという。大阪市内有数の恵まれた住環境と文教地区が広がる地域で、60~70代の「固定客」が多いのが特徴だ。「永いお付き合いのお客様が多い。それだけに、地域に根ざした店舗経営を大切にしたい」と話す。
 高さ300mの日本一の超高層ビル「あべのハルカス」と、国内最大の売り場面積を誇るあべのハルカス近鉄本店の開業で、「近鉄百貨店」の名前は今や全国区に。展望台やホテルとの連携効果もあり、広域から集客があるあべのハルカス近鉄本店を「全方位型」と表現すれば、上本町店は「地元密着型」の店舗だと考えている。店の規模やブランドの数は本店に及ばないが、上本町店ならではの魅力をどう発信していくか。従業員と意見を出し合い、戦略を練る毎日だ。
 1フロア約2000㎡の広さに1つのカテゴリの商品がそろう「適度な広さ」も同店の長所だ。「『買い物のしやすさ、使いやすさ』が受け入れられている」。
 本店の開業による影響も予測されたが、その心配は杞憂(きゆう)だった。「ハルカスに出かけるけれども、ゆっくり買い物するのは地元の店で、と使い分けているお客様が多い」と感じている。本店のある阿倍野と上本町間を結ぶ循環バスの利用も好調。本店の紙袋を下げた客がバスを降りた後、上本町店で食料品だけ買って帰る光景も何度か目にした。「同じような店づくりでは大型店の吸引力にかなわない。『こんな商品が欲しかった』と思ってもらえる品ぞろえやイベントで地元のお客様を引き付けたい」と話す。1509上本町店概観写真.jpg近鉄大阪上本町駅と直結する近鉄百貨店上本町店

 子育て世代も来店を
 上本町周辺では大規模マンションの建設が相次いでおり、近年、30~40代の子育て世代の客が増えている。7月に開催した子ども向けイベントでは、フロアの一角を埋めた来店者のベビーカーの数に驚いた。「この世代の方たちに来店してもらう工夫が必要だ」。子ども売場の充実や、食料品売り場の惣菜やスイーツの見直しなどを検討している。
 買い物途中にちょっと休憩できるスペースや店内で時間を過ごせる場所の確保も課題だ。「日本一滞在時間の長い百貨店」をコンセプトに掲げた本店の立ち上げに携わった経験を、こちらでも生かすつもりだ。
 「お客様の生の声を聞いて初めて分かることがある」という。着任後すぐ、売り場で聞いた客の声を集約し、従業員で共有する仕組みを整えた。「『あそこの電球が切れてたよ』とか、『ここの段差でいつもつまずく』とか、どんな小さなことでもいいんです。次に来店したとき、それらが改善されている。そんな積み重ねが大事なのかなと」。近隣に住む住民はどんなファッションや生活様式、食事に関心があるのか。「お客様の意見をじかに聞く場を近いうちに設けたい。我々もレベルアップしていかないと」と気を引き締める。
 上本町店での勤務は10年ぶり。以前と変わらず店をひいきにしてくれる根強い〝ファン〟がいることが心強い。「敷居を高くしたらこの店はだめかなと思う。『憧れの百貨店』のイメージを守る一方で、気軽に来店できる地域の身近な商業施設でありたい」と話し、「ここにいるとほっとする。あったかいまちです」と顔をほころばせた。

シェラトン都ホテル大阪総支配人
池宮 真 さん                 2015年8月号

おかげさまで30周年

1508池宮さん.jpg

 今年、開業30周年を迎えるシェラトン都ホテル大阪の総支配人を務める。近鉄グループでは昨年のあべのハルカス開業に続き、三重県での「伊勢志摩サミット」開催が決まり、グループ挙げて準備に追われている。「いい追い風が吹いている。このチャンスを生かしてホテルのレベルアップを図りたい」と気を引き締める。
 シェラトン都ホテル大阪は30年前、国際規模の会議や大会を大阪へ誘致しようと計画。10数年の構想を経て、1985年10月に開業した。「大阪にホテルが少なかった当時、各地から 精鋭スタッフを集めたと聞いています」。
 95年には大阪でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催。同ホテルはカナダの首脳たちの宿泊地となった。今も開業当初から勤める従業員がおり、「当時からのおもてなしの 気持ちが今のスタッフたちに受け継がれている」と実感している。
 入社以来、ホテル畑で歩んだ。「お客様と直接関わることのできるこの仕事が好き。お客様の人生のイベントに立ち会えた時、この上ない幸せを感じます」。
 入社後2年間の研修では、ベルボーイや客室清掃、フロント、宴会、レストランサービスなど一通りの業務を経験。ホテルマンとしての基礎を学んだ。
 同ホテルは2007年4月、一大ブランドである「シェラトン ホテル&リゾート」と提携。シェラトン、都ホテルのダブルブランドとして国内外の客に幅広く利用されるようになった。現在は宿泊客の6割近くを海外客が占めるという。
 創業後、社会情勢やホテル業界を取り巻く環境が変化する中、厳しい局面に立たされた時期もあった。「それでも続けてこられたのは、お客様の温かいご支援と激励のおかげ」と感謝する。
 時代の変化に対応しながら、今後40年、50年先のホテル像を見据えた運営に力を注ぐつもりだ。「ホテルはまちのランドマーク。多くの人に愛され、素敵な思い出が演出できるよう、地域とともに歩んでいきたい」。

 いけみや・まこと
 関西学院大学経済学部卒。1981年近畿日本鉄道に入社。都ホテル(現ウェスティン都ホテル京都)で研修後、博多都ホテルに配属。沖縄都ホテル、シェラトン都ホテル大阪総支配人等を経て、2013年12月から1年4カ月、旅館「奈良 万葉若草の宿 三笠」の総支配人を務めた。旅館ならではの客との距離の近さに「この仕事の原点をみた」。4月1日から現職。

大阪市立美術館
篠 雅廣 館長  <後編>           2015年7月号

変わらぬ良さ 受け継いでいく
1507篠館長2.jpg       しの・まさひろ       1950年、高知県生まれ。大阪大学大学院博士課程単位取得退学。西宮市大谷記念美術館学芸課長、京都市美術館学芸課長、高知県立美術館長を経て、2008年大阪市立美術館長に就任。専門は日本近代美術史。  美術館は単に美術品を保存し展示するだけの場所ではありません。見た人の記憶や思い出を残していく「装置」でもあります。
 従来の美術館は「美の殿堂」として、有名な作家の作品をかしこまって鑑賞する敷居の高いイメージがあったかもしれません。しかしこれからは、市民に親しまれる存在へとシフトしていく必要があると考えています。
さい頃、親に何度も美術館に連れてこられた子どもは、大人になってから美術が好きになるといわれています。「静かにしていなさい」「走り回ったらだめ」と言われ、絵を見てもよく分からない。子どもには何も面白くない場所に思えますが、頭の片隅には「ここは大人の特別な場所なんだ」という記憶が残るものです。
 その子がやがて大きくなり、見上げていた絵を親と同じ目線で見て、初めて両親が好きだった場所だと気付きます。今度は自分が子どもを連れて行くかもしれません。一緒に見た思い出やその時感じたこと、一枚の絵を見た記憶は次の世代に引き継がれていきます。美術館はそんな場所でもあるのです。
1507市美外観.jpg 当館がある天王寺公園はかつて、柵もなく自由に誰でも出入りできる庶民の憩いの場所でした。近くには通天閣で知られる繁華街「新世界」があり、新しくできたあべのハルカスが象徴するような洗練されたまちが併存しています。この地はまた、四天王寺や住吉大社など由緒ある寺社が点在し、古代から続く「上町台地」と呼ばれる特別な場所でもあります。
 文化の正しい在り方というのは、多様な文化や物の考え方が自然に生まれ、否定されないこと。歴史と文化が交錯するこのまちには、さまざまな価値観を受け入れる懐の深さを感じます。
 あるとき、新世界で暮らす年配の方が「生まれてから一度も行ったことはないが、丘を見上げればあの美術館がある。私たちのまちの誇りや」と話していたと聞き、胸が熱くなりました。
 美術館の存在はまちの品格であり住んでいる人の誇り。大阪市立美術館には多くの人の記憶や感動が詰まっています。それらを次の世代に大切につないでいかねばなりません。館長になって8年になりますが、「変わらぬ姿であり続ける」ことの重みを日々感じています。

大阪市立美術館で特別展 7月14日(火)から
関西美術界の流れ知る

 大阪市立美術館は7月14日(火)~26日(日)、近畿地方を中心とした作家たちの公募作品を展示する特別展「第61回全関西美術展」を開催します。日本画、洋画・版画、彫刻、工芸、書と美術のあらゆる作品が集まり、現代の関西美術界の流れを知るためには見逃せない展覧会といえます。
 陳列総数は約800点。近畿を中心に四国や北陸などから集まった作品のほか、著名な美術家を含む招待作家らの作品も展示します。
 同展は1941年から開催。地方の公募展で最も長い歴史があり、美術館の歴史と伝統が感じられることでしょう。
 料金は一般700円、高校・大学生500円。中学生以下、障がい者手帳等を持参の人(介護者1人含む)は無料(要証明)。7月21日は休館。
▽大阪市立美術館=天王寺区茶臼山町1‐82、電話06・6771・4874

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コレクション展

コレクション展.jpg 大阪市立美術館は7月14日(火)~8月30日(日)までコレクション展を開催します。
 今期のテーマは6つ。7月14日(火)〜26日(日)と8月4日(火)〜30日(日)は 「俑の世界」①、「輸出漆器 桃山~明治」②、「螺鈿 中国・朝鮮半島・日本」③、 「堆朱・鎌倉彫・根来」④。8月8日(土)〜30日(日)は、「仏教工芸」⑤、「沈没船からの贈り物」⑥を展示。
 料金は一般300円、高校・大学生200円。中学生以下、障がい者手帳等を持参の人(介護者1人含む)、大阪市内在住の65歳以上は無料(要証明)。休館日は、月曜日と展示替え期間(7月27日〜8月3日)。

大阪市立美術館
篠 雅廣 館長  <前編>           2015年6月号

美に付加価値を 展示に工夫
1506篠館長.jpg       しの・まさひろ       1950年、高知県生まれ。大阪大学大学院博士課程単位取得退学。西宮市大谷記念美術館学芸課長、京都市美術館学芸課長、高知県立美術館長を経て、2008年大阪市立美術館長に就任。専門は日本近代美術史。  天王寺公園の一角にある大阪市立美術館は、来年80周年を迎える歴史ある美術館です。
 当館のある場所はもともと、住友家本邸があった場所です。美術館を建設するために日本庭園「慶沢園」とともに寄贈され、1936年に開館しました。所蔵品の多くは、住友さんをはじめ大阪の実業家や文化人の寄贈によるものです。当館は市民の皆さんに支えられ、育てられてきた美術館なのです。
 建物は和洋のデザインを巧みに取り入れ、全国の公立美術館の先駆けになったことが評価されています。今年3月、国の登録有形文化財の答申を受けておりまして、間もなく正式に発表されることとなっています。
2 無款「扇舞美人図」.jpg無款「扇舞美人図」ⒸWESTON COLLECTION 長い歴史を誇るだけにハード面の老朽化は否めませんが、古き良きたたずまいを残しながら今の時代に合った新しい美術館像を構築していきたいと考えています。やりたいのは「美に付加価値をつける」ということ。良い作品があるというだけではなく、どう素晴らしいのかが来館者に伝わるような展示や収集の仕方が求められています。  街中にある文化施設として、来館者の滞在時間を延ばすことも課題の一つです。展覧会を見た後、近くの店で食事をしたり動物園にも立ち寄ったりしてほしい。周辺への経済波及効果も念頭に置いています。
 6月21日まで、特別展「肉筆浮世絵―美の競艶」を開催しています。米・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏が集めた肉筆浮世絵コレクションです。
 量産される浮世絵版画と違い、肉筆画は絵師が注文を受け、筆で直接描いた貴重な一点物。髪の生え際や衣装の文様まで精緻に描かれています。
 至近距離で作品を見てほしいと、今回は陳列ケースを一点一点特別に製作し、光が反射しない最新のアクリルガラスも特注しました。まるで展示ケースがないかのような臨場感で見ることができます。
 これまでとは違う展覧会をぜひ体感していただきたいと思います。

 (7月号に続く)

6月21日まで
特別展 肉筆浮世絵 ―美の競艶

3 菱川師宣「江戸風俗絵巻」.jpg菱川師宣「江戸風俗絵巻」(部分) ⒸWESTON COLLECTION 世界有数の規模と質を誇る米・シカゴの日本美術収集家ロジャー・ウェストン氏の肉筆浮世絵のコレクションから、美人画を中心とした優品約130点が初めて日本に里帰りする特別展「肉筆浮世絵―美の競艶」が大阪市立美術館で開催中です。
 菱川師宣、葛飾北斎、河鍋暁斎など多彩な絵師たちが絹や紙に直接描いた美人画など一点物の作品を通して、江戸初期から明治に至るまでの肉筆浮世絵の流れを見ることができます。今回特別に作られた展示ケースでは現在でも鮮やかに残る色彩や筆使いを間 近で鑑賞できます。6月21日まで。
 入館料は一般1500円、高大生1000円。中学生以下、障がい者手帳を持参の人は無料。
 ▽大阪市立美術館=天王寺区茶臼山町1‐82、電話06・4301・7285(大阪市総合コールセンター)

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大槻能楽堂 能の魅力を語るシリーズ
「能の描く女たち」 大槻 文藏 師     2015年5月号

女の生き様描く12作品
 大槻能楽堂は2015年度の自主公演能「能の魅力を探るシリーズ」で、女の生き様をテーマにした新シリーズ「能の描く女たち」をスタートする。恋や愛、嫉妬に悩む女、子に愛情を注ぐ母親としての女など様々な生き方を取り上げ、古今変わらぬ女の「情」を能独特の世界観で描き出していく。

1505大槻文蔵.jpg 来年3月まで上演する全12作品を、紫式部が描いた女性像▽戦に翻弄(ほんろう)された女たち▽恋と愛の果て▽母と子の情愛――と、4つのテーマに区切っており、前半は『源氏物語』と『平家物語』が原典となっている作品。シリーズを企画した大槻文藏師は「古代から中世までの女性たちがどのように力強く生きてきたかを再発見できれば」と狙いを語る。
 能では、歌舞伎の女形(おやま)のように、男性が「女性らしく」美しく演じることはない。能ならではの抑えた動きの中に、「女性の内面」をどのように表現するかが重視されるという。「能作者も演者も男性。男の目を通して描かれた女性を、男が演じる。女の内1505碁(文藏)ツレ有.jpg㊤大槻文藏師       ㊦能「碁」の一場面側を見据え、どう写し取るかということです」。
 5月30日(土)上演の復曲能「碁」でシテをつとめる。舞台は『源氏物語』「空蝉」の舞台となった都三条京極の中川。旅の僧が、空蝉と軒端萩が碁を打ち興じる場面を夢に見る。それは、光源氏が垣間見たそのままの光景だった―。
 久しく上演が途絶えていたのを、2001年に梅若六郎、大槻文藏によって復曲上演された曲。大槻師は、同じく復曲能の「敷地物狂」(3月19日)をはじめ、文献を手掛かりに学者と廃曲の研究・復活に精力的に取り組んでいる。「親と子の情愛や恋や愛など普遍的なテーマを持つ作品は、いつの時代も通用する。大槻能 演目.jpg後世へ引き継ぐためにもそれらを掘り起こす必要がある」と意欲を見せる。
 いずれの公演も、上演前に専門家による解説付き。「作品の背景や作者の意図を知った上で鑑賞していただければ、能の世界がより広がるのではないか」と期待する。
 開演は午後2時。料金は前売り4300円、学生2700円。当日一般4800円、学生3100円。
 ▽大槻能楽堂=中央区上町A‐7、電話06・6761・8055


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国立文楽劇場 4月公演 特別インタビュー
文楽人形遣い 吉田 玉女さん          2015年3月号

二代目「吉田玉男」を襲名
 文楽人形遣いの吉田玉女さんが4月文楽公演で、師匠である「吉田玉男」の名跡を継ぎ、二代目を襲名する。人間国宝で昭和・平成の文楽人形遣いの第一人者と評された吉田 玉男の初代門下として、「玉女」から「玉男」へ。「先輩方から襲名を勧められていたが、大きい師匠の名前を継ぐことになかなか決断できなかった。還暦を過ぎてようやく踏ん切りがついた。名前に恥じることのないよう、一層精進を重ねたい」と意気込む。

1503吉田玉女師写真01.jpg 大阪府八尾市出身。文楽との出会いは中学2年のとき、道頓堀の朝日座で「絵本太功記」の通し上演に立ち会ったのがきっかけだった。人手不足で声をかけられ、人形が出入りする小幕(こまく)の開け閉めなどの雑用を夢中でこなすうち、3人で遣う文楽人形の動きに惹かれた。中学卒業後、吉田玉男に入門した。
 20歳過ぎに実父を亡くした玉女さんにとって、亡くなるまで40年近く一緒にいた師匠は父親のような存在だった。「普段は無口な人でしたが、舞台のことではぼくたち弟子に根気強く、手取り足取り指導してくださいました」。
 太夫や三味線と異なり、人形遣いの場合は公演中も一日中師匠の傍らにいる。玉女さんは、師匠の人形の足遣いを10年、左遣いを15年務めた。「師匠の遣う人形はじっとしている役が多くて。動く足ももちろん難しいですけれど、長丁場の舞台でじっとしている足の役もしんどい。人形の足を持って師匠の体に密着し、ひたすら辛抱でした」。

1503吉田玉女師人形遣い.jpgそんなときも、師匠は「じっとしている役ができればなんでも遣えるようになる」と励ましてくれた。玉女さんは頭巾をかぶって足を持ちながら浄瑠璃に耳を傾け、人形を遣っている師匠の顔や動き、相手役の人形など舞台全体を見るようになった。「動かない足の修業がいかに大事か、後になって分かりました」。
 襲名披露の演目は劇場とも相談の上、「一谷 軍記」とした。遣うのは熊谷次郎直実。26歳だった1980年1月、若手の勉強会で初めて抜擢された主役だ。「師匠が左を遣ってくださり、この公演が後々に大変勉強になった」と振り返る。
 当時の正月公演中、師匠が遣う熊谷を毎日必死で見ていた玉女さんは、舞台のないとき師匠の人形でこっそり稽古していた。自分以外の者が人形を遣うと、肩車やひもの調子が微妙に変わる。師匠は「また使うたんか」とすぐに気付いたが、決して怒らなかったという。熊谷は師匠の好きだった役で、工夫を凝らした当たり役の一つでもある。
 人形遣いは表情を出さず、笑う時でも感情を腹でぐっと抑えて人形を操る。抑制の効いた中にも心情が伝わってくるような師匠の芸がまぶたに焼き付いている。「お客さんに分かってもらえるまでには年功がいる。師匠の型の中に自分の遣い方も入れて、『二代目玉男』を作っていきたい。60を過ぎたが、これからが勝負だと思っています」。

『未来記の番人』を出版
作家 築山 桂 さん              2015年3月号

四天王寺に遺された聖徳太子の予言書
 四天王寺には、開祖・聖徳太子が書いた予言書『未来記』が遺されている――。
2014年6月号『うえまち』の対談「大坂の陣400年と大阪城」に登場した作家の築山桂さんが、新著『未来記の番人』を刊行した。四天王寺にまつわる言い伝えや様々なエピソードをもとに、想像をふくらませて書いた時代エンターテインメント。大坂を舞台に、綿密な時代考証に基づく時代小説を書き続けてきた築山さんの挑戦とは――。

1503築山さん写真.jpg昨年の対談企画の取材時、四天王寺本坊にて 物語の舞台は四天王寺。聖徳太子が書いたとされる予言書は、天下を揺るがす書として長らく寺の奥深くに封印されてきた。将軍家光の命を受けた僧・天海は、異能の忍び・千里丸に幻の書を奪取するよう密命を下すが――。
 「大胆な設定。『千里眼』という常人にはない能力を持つ超能力者を登場させるなど、これまでの作品とは違った雰囲気で書いた」と築山さん。
 時代小説の中でも「江戸時代の大坂」にこだわった作品を多く書いてきた築山さんだが、今回の物語は江戸時代を中心に、中世や古代にまで話が及ぶ。「ずっと大切にしている私なりの〝大坂感〟がある。これを変えずに江戸時代の人たちから見た、それ以前の歴史を踏まえて生きている人たちのことを書きたかった」。鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて生きた楠木正成は「未来記」を読んだ人物として登場する。秘宝をめぐる争奪戦とそれを取り巻く人間模様を描いた今回の作品は、自身がこれまで作品を執筆する中で得た知識が土台となった。
 子どもの頃から歴史や時代劇、忍者物などが好きだった築山さんは、進学した大阪大学文学部で日本近世史を専攻。その後、大学院博士課程に進み、研究を深めた。作家デビュー後も、文献を読み込んだり実際に歴史の現場に足を運んだりして丁寧に取材を重ねてきた。
 聖徳太子の頃から伝わる「天王寺雅楽」についてもっと知りたいと、四天王寺の「天王寺楽所(がくそ)」に入所し数年間、笙(しょう)を学んだこともある。雅楽や四天王寺の歴史などを調べるうちに、興味深い言い伝えがあることを知った。今回の作品が生まれるきっかけとなった。
築山さんプレゼント.jpg 「聖徳太子が鷹に生まれ変わるとか、未来を予言する遺言書を残していたとか。奇抜な伝説ともいえるが、小説をきっかけに、じゃあ本当はどうだったのだろうかと興味を持ってもらえたら嬉しい。また、現在の住友財閥発展の基礎となったのが大坂銅吹屋であるということをその会社にお勤めでも知らない方も多い。江戸時代の大坂という世界観や1400年以上の歴史を持つ四天王寺の奥深さ、面白さを味わってください」。

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演芸評論家
相羽 秋夫さん               2014年10月号

「落語に出てくる動物」魅力伝えたい
11月号からスタート 落語コラム
天王寺らくご動物園
 『うえまち』では11月号から、演芸評論家の相羽秋夫さんの連載コラム「天王寺らくご動物園」が始まります。来年、天王寺動物園が開園100周年を迎えるのに合わせた企画。動物が出てくる落語を毎回紹介し、解説を加えてその魅力を伝えます。 
 本企画には天王寺公園の活性化に取り組む浪速区も協賛しています。
相羽秋夫.jpg      あいば・あきお        1941年生まれ。同志社大学卒業。松竹芸能で大村崑、笑福亭鶴瓶らのマネジャーを担当後、独立。現在はフリーで放送作家、演芸評論家。88年から2012年まで大阪芸術大学教授。読売新聞で「笑いでQ」、大阪日日新聞で「お笑い食べまくり」を連載中。
 数ある芸能の中でも、落語は日常を非常に写実的に描いています。ネコやイヌといった身近な動物が多く登場するのも特徴で、その生態が実にいきいきと描写されているのも落語ならではのものです。
 例えば一心寺が舞台の「天神山」。助けてもらったキツネが恩返しするというお話です。キツネやタヌキは人を化かす悪い動物ではなくて、けなげな一面もある…そんな見方もあるのです。大阪市内で動物園があるのは天王寺動物園だけ。動物のいとしさ、かわいらしさを、落語を通して知っていただけたらと思います。
 天王寺に暮らしてまだ10年ですが、人情が残るこのまちに愛着があります。庶民の芸能である落語では、武士や医者などは〝ぼろかす”に描かれ、演じられています。落語の描く世界、人情がこのまちには残っています。
 落語は演者の個性より、ストーリーで楽しませる芸能。テレビなどで直接的な笑いしか知らなかった人が、生の落語を聞くと、ストーリーのダイナミックさに驚きますね。
 「笑い」というのは不真面目なことだと受け取る考え方が一方にはあります。能や歌舞伎は真面目なものですか。でもね、真面目の反対は不真面目じゃなくて、「反真面目」なんです。その奥深さを、私は生きている限り追求したいと思っています。

 ※「天王寺らくご動物園」は落語の知識がなくても楽しんでいただけるコラムです。11月号掲載の第1回は「百獣の王・ライオン 孤高の猛獣・虎」です。お楽しみに。

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観世流能楽師
大槻 裕一                2014年9月号

大阪城本丸薪能で「石橋」
豪快な赤獅子の舞 若さで魅せる
本丸薪能チラシ.jpg 大阪城天守閣本丸広場で9月23日(火・祝)夕、大坂の陣400年を記念した「大阪城本丸薪能」が催される。能楽界の重鎮、大槻文藏と花形役者たちが出演。配役や選曲など企画を手がけたのは、若手能楽師として注目を集める大槻裕一(16)だ。自身も能「石橋(しゃっきょう)」でシテを演じる。
 父は観世流能楽師の赤松禎友。2歳の時、仕舞「老松」で初舞台を踏んだ。幼い頃から謡や囃子(はやし)が身近にある生活。先に能を習っていた4歳上の姉に「負けたくない」一心で芸を磨き、多くの子方を務めてきた。
裕一候補C.jpg 幼い頃、舞台で感じていたのは「辛抱」の2文字。子方とはいえ出番はわずかで、舞台の左端で何時間もじっと座っているだけという曲も多い。「足は痛いし退屈で」。だが背後から聞こえてくる楽器の音を聞くのは好きだった。子方の稽古は「おうむ返し」が基本だが、嫌だと思ったことはないという。浴衣を着て畳の上でやる謡や舞の稽古も楽しんだ。「今も稽古は好き。能を続けている理由かな」。
 昨年4月、大槻文藏の芸養子となり、「大槻裕一」を名乗ることとなった。師の教えは「20歳になるまでに、200曲覚えるように」。譲り受けた桐の箱には200曲の稽古本がぎっしり。期待の大きさに身が引き締まった。
豪華絢爛(けんらん)な衣装と獅子の乱舞が見どころの「石橋」は、能初心者も楽しめる人気曲だ。前後二場あるうち、後半だけの「半能」形式で演じられることが多いが、今回はめったに演じられない前半部分も上演。短い曲だが「節(ふし)や息継ぎが難しく、目まいがするほどしんどい」という。後半では、迫力あるお囃子にのって豪快な舞を披露する。「若さを生かし、赤獅子の力、スピード感を全力で出し切りたい」と意気込む。
 親獅子に大槻文藏、ワキに福王和幸、間狂言に野村太一郎で裕一を支える。演目はほかに、一調「勧進帳」、狂言「清水」。
開演は午後6時半。

 移動式の能舞台 初披露
 幻想的な雰囲気を楽しめる野外能は、一方で、気候や自然条件に左右される欠点もある。だが「外で演じるプラス面はある」と前向きだ。
 「『能楽殿』といわれた能舞台はもともと、神社や城の屋外にあったもの。『石橋』は唐・清涼山が舞台になっており、風の音や虫の声といった自然の空気感を作品の世界に当てはめて鑑賞すればより楽しめると思う」。
 今回の薪能では、自前の移動式舞台を初めて使用する。広さ・高さともに大槻能楽堂の能舞台と同じもので、床は竹板。柱には吉野ヒノキを用いるなど常設舞台にできるだけ近づけた。
 どこでも組み立てられるため、常設の能舞台がない地方でも能公演を行うことができる。「作品の舞台になっている場所で舞台をしつらえ、『ご当地曲』を演じるのが夢であり目標。全国各地を巡り、能の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と話す。

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大阪歴史博物館館長に就任した 

栄原 永遠男 氏              2014年8月号

大阪の歴史、世界へ発信

栄原氏140801.jpg 「大阪の歴史を、日本だけでなく世界に向けて発信していく使命がある。そのために、やるべき展示はきっちり行っていきたい」。今年4月、大阪歴史博物館(中央区大手前)の館長に就任した。専門は日本古代史。木簡研究の第一人者としても知られる。古代の大阪に関して造詣が深いが、歴博のトップとして今後は広い視野が求められる。「『都市大阪』をメインに紹介する博物館。大阪の背骨である上町台地を中心に展開した、非常に豊かな文化を皆さんにお伝えしたい」と抱負を語る。
 大阪市内で育った。小学生の頃、大阪城に遊びに来ては石垣によじ登り、大名の刻印探しに夢中になった楽しい思い出がある。「まさかその近くで働くことになるとは」。
 東大寺史研究所所長、大阪市立大学客員教授・名誉教授を兼務。大阪と奈良を行き来するかたわら、様々なプロジェクトにも関わっている。その一つ、史跡難波宮跡をはじめとする歴史遺産の活用を目指す「なにわ活性化プロジェクト」では、上町台地を愛し、熱い思いで活動する多くのNPOや市民団体の存在を知った。「歴博が彼らのパイプ役となり、ともにその力を上町台地の活性化につなげていけたら」と期待する。
 折しも今年は難波宮の第1次発掘調査開始から60周年。これを記念し、同館では8月18日まで特別展「大阪遺産 難波宮」を開催している。長らく「幻の都」と言われ困難を極めた調査と保存の歴史、再三の開発から遺跡を守った山根徳太郎博士ら先人たちの苦労に思いをはせ、その節目の年の就任に「めぐり合わせ」を感じている。6月下旬には特別展関連行事として自ら講演し、聖武天皇と難波宮の関わりについて来館者に語りかけた。
 大都市大阪の中心部の地下に眠る難波宮の発掘調査は、その上で暮らす市民や地権者らの協力が欠かせない。「色んな方の思いがつまった60年。これまでの調査で何が分かったのか。今回の特別展には、そういうものを一堂にまとめて市民の皆さまにお返しするという側面がある」という。
 地道な調査は今も行われており、新しい発見も続いている。「難波宮は、大阪の歴史はもとより日本の古代を考える上で非常に重要な都。謎が明らかになっていくことで、今の私たちや大阪のまちづくりに返ってくるものがあると思うのです」。


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特別インタビュー 山本能楽堂 代表理事・能楽師

山本 章弘 師               2014年6月号

上方芸能の発信基地に

章弘師web.jpg 山本能楽堂は今後、上方伝統芸能の一翼を担う施設としてどのような役割を果たしていくのか。山本師に聞いた。
     ◇

 ――能楽堂が新しく生まれ変わった意義は。
能楽堂は自分たちだけのものではない。大阪の文化遺産として継承していくべき「開かれた施設」だと考えている。今回の改修で耐震補強や照明、空調、バリアフリー設備などを整え、どなたでも利用しやすい空間にした。能を見るための場所としてだけでなく「現代の社交場」として門戸を広げ、多くの人が色々な芸能と出合い、楽しむ場になってほしい。

 ――これから取り組みたいことは。
「地域に根ざしていく」ということ。大阪には様々な芸能が息づいているのに、地元の方がその魅力に触れていないのが残念で。能でいうなら、セリフは分からなくても、初めて聞く和楽器の音や能面を見た瞬間に感じるものがあるだろう。そうしたものに初めて接し感動する場でありたい。
後進の育成も急務だ。噺家や講談師、能楽師らジャンルを越えた若手が、一緒に寝泊りしながら切磋琢磨するような場をつくりたい。 

 ―子どもたちへの能の普及にも力を入れている。
美術家の協力を得て、能の世界に「図画工作」を取り入れる試みをしている。例えば能の演目「羽衣」に出てくる雲、「船弁慶」なら波をイメージして工作をする。能を鑑賞するだけでは記憶は薄れていくが、形として残るものがあれば、彼らが大人になったとき能と再会するチャンスになるのではないか。
▽山本能楽堂=中央区徳井町1‐3‐6、電話06・6943・9454

―― 6月の公演情報 ―― 
 たにまち能
 「安宅」「花筺」ほか
 創立以来続く歴史ある定期公演「たにまち能」を6月7日(土)午後1時から開催する。6月は「素謡会(すうたいかい)」。「素謡」とは舞と囃子(はやし)を省き謡のみで演じられる能形式。謡を聞き、頭の中で情景を想像しながら鑑賞する。演目は「安宅―勧進帳」「花筐(はながたみ)」「道成寺」ほか。
 入場料は一般5500円、学生3000円。

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大槻文藏 「作品の背景知ればもっと面白く」
2014年5月号

世阿弥生誕650年記念「名作とその作者たち」

実盛(文藏)web.jpg能「実盛」(大槻文藏)大槻能楽堂は来年3月まで、世阿弥生誕650年を記念したシリーズ「名曲とその作者たち」を毎月開催。能の大成者・世阿弥を中心に、前後の時代の能作者と作品を紹介する。シリーズを監修した大槻文藏師は「作品にはそれぞれ、各代の能作者の特徴、作風の違いが顕著に表れている。作者と作品を結び付け、その背景にあるものを知ることで能がもっと面白くなるはず」と狙いを語る。


 観阿弥に始まり世阿弥に受け継がれた能は、世阿弥の息子、観世元雅、娘婿の金春禅竹といった能役者たちによって発展していく。当時の鎌倉新仏教の影響を受けた世阿弥が、「禅」思想を自身の作品に反映させ禅竹がそれを継承した一方で、大槻文藏web.jpg元雅の作品には「死」の哲学が色濃く出る。世阿弥の影響を受けながらも、それぞれが個性的な作品を生み出した。大槻師は「その時代の人々が求めたもの、足利義満ら時の権力者の意向、それに応える能役者たちの置かれた境遇など、様々な社会的背景が作品からうかがえる」という。
 また世阿弥が観阿弥の作品に手を加えたり、別人の作品を手直ししてより洗練された内容にしたりしたとみられる曲もある。作者不詳とされるそれらの作品の中には「大変な名作もある」といい、同シリーズで取り上げる。今なお多くの魅力が隠されている世阿弥の世界にあらゆる角度から迫る一年になりそうだ。


<思い>語る能
 ストーリーが徐々に展開し、起承転結があるのが普通の舞台劇。しかし世阿弥の能は、現在から過去へと時間をさかのぼりながら、主にシテ1人が親子愛や恋、この世への悔恨といった様々な〈思い〉を語る「夢幻能」と呼ばれる独特の形式だ。例えば5月24日(土)上演の能「実盛」では、戦で不本意な死を遂げた老武者(シテ)が、幽霊となって高僧の前に現れ、生前の無念、成仏できない悲しさを語る。「能とはいわば、『情念の抽出』。ストーリー性はない。難しいと言われることもあるが、他の芸能とどう違うのか、そこを少しでも感じてもらえたら」と大槻師は話す。
 いずれの公演も解説付き。開演は午後2時。料金は前売り4300円、学生2700円、当日一般4800円、学生3100円。
 ▽大槻能楽堂=中央区上町A‐7、電話06・6761・8055

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特別インタビュー 国立文楽劇場

豊竹 英大夫氏            2014年4月号

江戸時代にタイムスリップした気分で

豊竹英大夫web.jpg 国立文楽劇場では4月5日から、4月公演で通し狂言「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」を上演する。平安時代、学者・政治家として上り詰めた菅原道真の大宰府流罪事件を題材に、道真と周囲の人々の生きざまを描いた大作。道真を御祭神とする安居天神(天王寺区)がある上町台地にゆかりの作品でもある。「語り手」である文楽大夫の中堅実力派として活躍する豊竹英大夫さん(67)は「江戸時代にタイムスリップし、町人になったつもりで見ていただけたら」と気楽な鑑賞を呼びかける。
 「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」とともに日本戯曲史上、三大名作と呼ばれる同作品。英大夫さんは「短い段もそれぞれに山場があり見応えがある。それらは連なっており、全体としても非常に筋が通った作品」と評価する。演目は全4段、計9時間の長丁場。好きな幕だけ見られる格安の「幕見席」(当日販売)もおすすめだ。だが、全幕通しで観ることができるのも通し狂言ならでは。物語がよく理解でき、「通の方にはたまらない魅力。お尻は痛くなりますが(笑)」という。
 とはいえ、文楽初心者の中には、なじみのない義太夫節の言葉に「文楽は敷居が高い」と感じる人も少なくない。しかし、英大夫さんは「すぐに分かる人などいません」。文楽は江戸時代、大衆の中で育まれた芸能。そこに描かれる光景や設定、使われる言葉は現代とは異質なものと考えて鑑賞した方がいい。英大夫さん自身、若い頃に初めて文楽を見たとき「訳分からん」と顔をしかめた。それでも、迫力ある義太夫の声、かき鳴らされる三味線、顔を出したまま人形を遣う人形遣いの三者が織り成す舞台に引き込まれた。「なんてシュール。よう分からんけどすごい芸術や」。また見たいと思ったのがこの道に進んだきっかけだ。
 近年、能楽や落語との共演や新作「ゴスペル・イン・文楽」の開催など、他芸能と文楽を結び付ける活動にも活躍を広げている英大夫さん。客層も広がっており反応は上々という。大阪市内で主宰する義太夫教室も参加者が絶えず、根強い人気を実感する。「文楽にまだまだ未知の魅力がある証拠。現代に生きる価値があるということ。色んな切り口を探り、文楽ファンの裾野を広げたい」と意欲的だ。
 ▽国立文楽劇場=中央区日本橋1‐12‐10、地下鉄日本橋駅7号出口。国立劇場チケットセンター(電話0570・07・9900)

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国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫 引退公演
通し狂言「菅原伝授手習鑑」
2014年4月5日(土)~27日(日)
第一部:午前10時30分開演
第二部:午後4時開演

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特別インタビュー 国立文楽劇場

水野 英二 理事            2014年3月号

大夫、三味線、人形のアンサンブル魅力

まずは雰囲気味わって

1403水野氏web.jpg開場30周年を迎えた国立文楽劇場の水野英二理事に4月公演や文楽の魅力などについて語っていただきました。


――4月公演の見どころは。
 開場30周年記念公演の最初の出し物が「菅原伝授手習鑑」です。三大名作の一つといわれ、菅原道真を主人公にしたお芝居です。安居天満宮(安居天神)がある上町にもゆかりのある作品なんですよ。天神さんの昔話を見に行こう、くらいの気軽な気持ちで見ていただければ。寺子屋(3533)web.jpg相丞名残の段web.jpg

――文楽の魅力は。
 「大阪生まれの伝統芸能」といわれてもピンとこないかもしれません。しかし、文楽の大夫が語る義太夫節は大阪の言葉ですし、西洋の楽器とは一味違う三味線の豊かな音色や世界で唯一3人で一体の人形を遣う独特な操り方も魅力。色々な面から興味を持っていただけると思います。何といっても人間と違い、ピュアな人形が見せるハッとするような表情には感情移入してしまいます。大夫、三味線、人形の見事なアンサンブルによって繰り広げられるドラマの中に入り込む醍醐味を味わっていただきたいですね。お求めやすい価格で一部分を観劇できる幕見席もあります。舞台の全てを理解しようとしなくてよいのです。まずは雰囲気を味わうだけでも楽しいと思います。

――上町台地にお住まいとか。
 上町は見どころが多く、散歩にも適した住み良い所だと思います。劇場も近いので、近隣の方には何度も訪れて文楽に親しみ、ファンになっていただきたいですね! 文楽は、初心者から長年のファンの方までどなたでも見るたびに新たな発見や感動を得られる奥深い芸能。大阪が世界に誇る文化だと思います。まずは一度劇場へ足をお運びください。

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インタビュー 新トップの顔

シェラトン都ホテル大阪 総支配人 米田昭正氏                        2014年3月号

コミュニティーの中心となるホテル目指す

「上町台地は伝統と文化が息づく非常にポテンシャルの高い地域。魅力を掘り起し、国内外のお客様に情報を発信したい」―。昨年12月1日付で就任した。シェラトン都ホテル大阪を運営する近畿日本鉄道(天王寺区)に入社し32年。うち17年間をアメリカで過ごした国際派だ。一昨年にロサンゼルスから帰国、久しぶりに本社のある大阪上本町に戻ってきた。米田支配人01web.jpg ロスでは、新しいまちの中心的存在となるホテルの開業を手掛けた。行政との連携や地域との共生、地方自治のあり方など多くを学び、「ホテルはコミュニティーの中心。地域に根差し、地元の方にいつでも来ていただける場所でなければ」との思いを強くした。大小の宴会場やレストランを備えたホテルは、さながら地域の「公民館的な存在」だと考えている。「大規模災害時には拠点として、また日頃は地元の方が気軽に集い語らうまちの施設として活用していただけたら」。
 円安などの影響で、シェラトン都ホテル大阪では海外からの客が昨年1年間で倍増。関西、伊丹両空港を行き来するリムジンバスの便の多さに加え、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、神都近鉄上六web.jpg戸や京都、奈良といった観光地を訪れやすい利便性から、「海外からの玄関口は(ホテルが位置する)上六」ときっぱり。海外客への対応は重要課題の一つで、併せて周辺の観光案内も充実させたい考えだ。
 長期にわたる海外勤務で身に染みて感じたのは「自国の文化を理解していないと外国人ときちんと話ができない」こと。ホテル近隣には大阪城をはじめ、四天王寺や生國魂神社などの古刹、伝統芸能の舞台など世界に誇れる日本の歴史・文化が集積している。「外国の方は異文化に強い関心を持ち、歴史に敬意を払っている。ご紹介すればきっと満足いただけるはず」と自信を見せる。
 気さくな語り口、絶やさない笑顔にフレンドリーで率直な人柄がにじむ。培った国際感覚を生かし、シェラトン都ホテル大阪の新しい〝顔〟として舵取りに挑む。
 ▽シェラトン都ホテル大阪=天王寺区上本町6‐1‐55、電話06・6773・1111

シェラトン都ホテル大阪

「祝祭」シリーズ

お宮参りシェラトンweb.jpg シェラトン都ホテル大阪では、子どもの大切な晴れの日を家族でゆっくりお祝いできる「祝祭」シリーズを販売しています。
 「お宮参りプラン」(8万円)は、日本料理「うえまち」や宴会場を会場に、大人6人分の料理と室料、ホテル内写真場での撮影1カットがセットになったプランです。ほかに「御両家顔合わせ会食プラン」(8000円~)や「お食い初めプラン」も。「ベッド&チェア」を用意するなどホテルならではの行き届いたおもてなしも魅力です。


連絡先 : 日本料理うえまち(電話06・6773・1253)
シェラトン都ホテル大阪=天王寺区上本町6-1-55、近鉄大阪上本町駅直結

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第51回なにわ芸術祭「新進落語家競演会」新人奨励賞 受賞
桂 佐ん吉さん                   2014年2月号

生の落語 気楽に

ちょうば01web.jpg桂ちょうばさん 「第8回うえまち寄席」が2月22日(土)午後2時から、阿倍野区民センターで開かれます。「上方落語の始祖」といわれる初代・米沢彦八が上町台地にある生國魂神社で活躍したのにちなんで始まり今回で8回目。手頃な価格で誰でも気楽に落語を楽しめる「地域寄席」です。その魅力を出演する桂佐ん吉さんに語っていただきました。


さんきち01web.jpg桂佐ん吉さん 味わい深い噺(はなし)、ホロリとさせられる人情噺、滑稽噺など毎回バラエティー豊かな演目です。落語は取っ付きやすい古典芸能。「落語は初めて」というお客さんも楽しんでいただけます。噺家を間近にする臨場感は「生」ならではのもの。想像力を働かせながら聞く面白さにきっと引き込まれるはずです。
 出演は、私と桂ちょうばさんの2人。普段から共演する機会も多く、平成13年入門の同期同士です。寄席はお客さんの反応が演者のノリを決めるといっても過言ではありません。素直に「面白い!」と笑っていただけたら私たちの刺激になります。演者とお客さん、会場そのものに一体感が生まれたらしめたものです。
 「明るく楽しい落語」が私のモットー。うえまち寄席は大ネタを披露できる貴重な機会でもあります。当日は全力で高座を務めさせていただきます。


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『うえまち』について

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