子育て応援企画 of 上町台地の地域情報紙『うえまち』

子育て応援企画

インタビュー〔後編〕 助産院「ばぶばぶ」院長 

こばやし ひさこ さん          2014年10月号

もっと力を抜いて 頑張らないで
1410こばやしさん.jpg 「産後のお母さんたちの心を解きほぐし、癒やしてあげたい。それが助産師としての自分の役割だと思っています」。
今年3月に第10子を出産し、4男6女の母親となった。助産院「ばぶばぶ」院長のこばやしひさこさんは、10人の子どもを生み育てる中で得た経験に基づき、子育てに悩む母親たちの心のケアを行うほか、子育てセミナーや「いのちの授業」など多方面で活躍。多忙を極める中、子育てを楽しむこばやしさんにインタビューに応えていただきました。

 ――どんな方が助産院に来られますか。
 とにかくいっぱいいっぱいのお母さんが多いですね。子育てだけでなく何事に対しても完璧を求めて、周りのお母さんが自分より格好よく見えてしまったり。そんな時は「子どもを見て」と声をかけます。めっちゃ笑ってて、すごく子どもらしくて天真らんまん。何か問題あるかしら、ないですよねって。じゃああなたの子育て完璧なんじゃないのって。
 昔に比べると女性が子どもを生む数が減っていることもあり、どうしても子どもを自分の所有物みたいに考えてしまうんですね。「自分の理想となる完璧な人間をつくりたい」と。人数が増えてくるといい具合に力が抜けてくるのですが。
 自分のことを好きになれないお母さんが多いのも気になります。お母さん自身が自分を愛せないのに、子どもに自分を大切にする心が育つでしょうか。親ができないことを子どもに要求してもできるわけがないのです。「子どもにはこんな風になってほしい」と望む前にまず、お母さん自身が自分を認め、好きになってほしいです。
 ――周囲の情報や意見に流されてしまいそうになることもあります。
 子育てや人生観に正解とか不正解はありません。例えば「お受験は必要」と考える人もいれば、「とにかくドロドロになって遊べばいい」という意見の人もいます。どちらも正解で、間違いとは言えませんよね。 
 自分とは異なる意見を持つ人に接した時「私と意見が違う、何で」と構えてはトラブルになってしまいます。そうではなくて、「そういう考え方もあるんだ」と受け止め、「なるほど。あなたはそういう考えなんですね」と返すんです。いちいち受け入れて「私とは違う」と自信をなくしたり、否定されたと悩んだりする必要はありません。「あなたはそういう考え方、私は違う。でもお互い違うから面白いですよね」と前向きにとらえてみてください。
 これが幸せ、これが正しいなどと決めつけるとしんどくなります。相手を認めることで、人付き合いはぐっと楽になるはずです。
 ――こばやしさんの著書に「子育ては頑張ったら負け」とありますが子育てを楽しむ秘訣(ひけつ)は。
 母親がすべきことは、自分自身が正しい生き方をすること。人に会えばあいさつをする。感謝した時は「ありがとう」。「しまった」と感じたら「ごめんなさい」と素直に謝る。どれも当たり前のことばかりです。 そんな姿をいつも傍らで見ている子どもは、「こういう場面ではこういう風に言うんだな」と自然に学んでいくでしょう。「ありがとうは」などと促すのは良くありません。まず母親が、人に対して言葉を選んで話すとか、傷つけないように気配りするとか、人としてあるべき姿を意識して子どもにさりげなく見せていくことが大切です。「親の背中 を見て子は育つ」ですよ。
 時には親も感情をあらわにしてしまったり失敗してしまったりすることもある。そんな時は「イライラして理不尽に怒鳴ってしまった。ごめんなさい」と率直に伝える。子どもには、お母さんが誠実に自分と向き合って謝罪してくれたという気持ちがきっと伝わります。後悔して 子どもの寝顔を見て泣くのではなく、言葉にしてきちんと伝えましょう。
 「母親だからこうあるべき」という先入観を捨て、もっと力を抜いて。「頑張らないことを頑張って」ですね。
 ――読者に向けてメッセージを。
 子育てが現在進行中の私も一人泣く日があります。思春期を迎える中学・高校生は一筋縄でいかず、日々苦悩の連続です。  
 それでもやっぱり子どもは面白い。迷った時、途方に暮れた時は子どもをよく見てください。あ、笑ってる、手を差し伸べてる…。にこにこしながら話しかけてくる子どもたちの表情を見ていたら「あ、幸せやん私。これ以上何を求めているんだろう」と思えます。今まさに子育てで一番難しいところにいるなと自分で感じています。でも、そんな時期を乗り越えて親も子もきっと成長していきますから。
 ▽助産院「ばぶばぶ」=阿倍野区阪南町2‐29‐7
 http://babu-babu.org//

インタビュー〔前編〕 助産院「ばぶばぶ」院長 

こばやし ひさこ さん          2014年9月号

子育て 完璧求め過ぎないで
kobayasi.jpg 「産後のお母さんたちの心を解きほぐし、癒やしてあげたい。それが助産師としての自分の役割だと思っています」。今年3月に第10子を出産し、4男6女の母親となった。助産院「ばぶばぶ」院長のこばやしひさこさんは、10人の子どもを生み育てる中で得た経験に基づき、子育てに悩む母親たちの心のケアを行うほか、子育てセミナーや「いのちの授業」など多方面で活躍。多忙を極める中、子育てを楽しむこばやしさんにインタビューに応えていただきました。

 毎日忙しく、時間が足りない。私もほかのお母さんと同じです。ただ、要領はいい方かもしれません。私自身が「育児書」だと思っていますので、「本の通りにしなければならない」は私には一切ありません。
 例えば「お風呂の30分前までに授乳を終えなければならない」という考え方がありますが、お風呂イコール授乳タイムです。そうすればお風呂も終わる、授乳も終わる。一石二鳥です。本の通りにしようとするからできないんですね。
 「時間が足りない」のは、少ない時間を密度の濃いものにする工夫が必要です。子どもを保育園に迎えに行き自転車に乗って帰る10分間。「今日習った歌、歌おうか」と一緒に大声で歌いながら帰ってくる。10分間を無言で帰ってくるのではなくて、コミュニケーションの時間に使うとか、そういうことは心がけています。 
 仕事に子育て、家事…どれも完璧を求め過ぎるとうまくいきません。できることとできないことを見極め、与えられた時間や制約の中で最大限のことをするという意識を常々持つことが大切です。
 「家事」というのは「家の事」と書きます。「家族」は「家の人」です。「手伝ってもらう」というのではなく、「『家の事』は『家の人』が皆でするのが当たり前」というのが私の持論です。幼稚園児や小学校低学年の子ができることもあります。
 小学生以上の子たちは「自分のことは自分でやっていこう」という方針で、わが家では1年生から料理をさせています。「冷蔵庫を開けて、あるもので何か工夫して作ってみ」と。最初はとんでもないものが出来上がりますが、自分で考えて工夫してやってみることに喜びを見いだしてほしい。子どもたちは何度も失敗して学習します。
kobayasi2.jpg 「これは危ないから気を付けて」とだけ伝えれば気を付けるし、「危ない、危ない」と止めにかかったら学習できません。「実践して学べ」です。「怖い怖い」と思っているのは大人の方で、「こういうことやから、そこだけ気いつけや」と示して任せれば、本当に何でも上手にやるんですよ。二度手間になったり、余計面倒になったりすることもありますが、そこは気持ちを切り替える。最初からやる気の芽を摘んでしまってはいけないと思いますね。

 「産後」を支える
 第1子出産と同時に仕事を辞め、5人目を生むまで専業主婦でした。その間感じたのは、子育てが始まった時に支援したり、精神面のケアをしたりする専門家がいないということ。お産までではなく、「その後」も支えてあげたい。それが助産師としての自分の役割だと気が付きました。 
 みんな孤独なんですよね。15年ほど前から、妊産婦を対象にボランティアでメール相談をしています。助産院に「話を聞いて」と足を運んでくれる人はいいですが、そういう所でさえも一歩踏み出せない人もいる。そんな人も、面と向かって話せなくてもメールなら気軽に相談できるかもしれないと考えました。少しずつ心を開いてもらって、最終的には「一度話そうか」と。話をしてハグするだけでスッと楽になりますし、来院時と帰る時で表情はまるで違います。
 「子育て」は本来、楽しく幸せなもの。それが築ける本来の場所に連れ戻してあげたい。悩んでいるお母さんたちは、助産師の言葉や関わり方の一つ一つに一喜一憂するものです。相手をよく見て、言葉の選び方や声のかけ方を見極める力も助産師には求められます。温かい心を持ち、人の痛みが分かる助産師でありたいと、いつも心に刻んでいます。
 ▽助産院「ばぶばぶ」=阿倍野区阪南町2‐29‐7
 http://babu-babu.org/

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