②「感傷旅行」 センチメンタル・ジャーニィ 2016年6月号
田辺聖子が1964年の芥川賞受賞者であることを覚えている人は少ないかもしれません。大阪市福島区出身、大阪文学学校で文章術を学んだ田辺さんの作品は、分かりやすい文章とユーモアあふれる語り口の小説、古典文学の紹介・解説あるいは柄 井川柳の評伝など多岐にわたっています。中高年には懐かしい。ただ悲しいかな、書店や図書館の棚ではめったにお目にかかれません。
本作は、彼女の芥川賞受賞作です。共産主義党員を愛し捨てられた主人公と親友の姿を、当時の世相(プロレタリアートに寛容だった)を背景に描いています。気負いの感じられる表現が初々しく、ドリス・デイの「センチメンタル・ジャーニー」が聞こえてくるよう。
なぜか、現代にもありそうなお話にも思えて女も男も「あほやなあ」と思うとおかしくなります。
リクエストに応えて
毎号、読者プレゼントの応募必要事項にあるアンケートには、さまざまなご意見をいただいています。そこに「本を紹介してほしい」という要望が多数寄せられていました。その要望に応えて、今号から隔月で元大阪市立図書館員・本屋のおばちゃん(ペンネーム)の本紹介コーナーが始まります。
本屋のおばちゃん
元大阪市立図書館員。天王寺図書館長などを経て、2011年に浪速図書館長で定年退職。現在は、ボランテイア活動中。
①「大阪を古地図で歩く本」 2016年4月号
外に出るのがうれしい季節になりました。普段何気なく歩いている道・場所にも、意外な歴史や由来があります。この本は、身近な所の地名やまち並みについて気軽に読め、大阪を知る入門書です。地名順・地域順・区別などに編集されてはいませんが、まちの成り立ち・商業・交通など6章にまとめて大阪の謎を解読しています。
例えば、大阪にもお台場があったとか、千日前は処刑場だった。梅田は埋田だった。昔は東西の通りがメインだったので、御堂筋は1937年以前は幅6メートルの細い道だった。市場の変遷。大丸百貨店のルーツはなどなど…。
「へえ、全然知らんかった」という人。「いや、もう知ってたで」という人。どちらも気になる箇所を読んでみてください。昔のまち並み・歴史を思いながら、妄想を膨らませるのも一興ですよ。