第26回
相談事例⑤「潜伏していた不登校の原因」 2016年6月号
友人関係がうまくつくれず、集団の中での孤立感を味わい続け、やがて「学校生活が楽しくない!」と不登校になってしまうケースはよくあるものです。この顕著な例は大学生にも多く見られます。とりわけ高校時代における不登校を十分克服できないままに大学へ進学した生徒が広いキャンパスで味わう孤立感は、新たなキャンパス生活への期待と意欲を奪い取ってしまいます。そして、再び不登校の現実に引き戻されてしまうのです。一方、日常的には数人の友人もおり、ラインなどで交流しながら時々外出もしている。一見、学校生活を 楽しんでいると思っていた我が子が、ある日を境に不登校気味になっていったという例もあります。何か大きな出来事が学校であったのではないかと不安は募ります。
高校1年生の敏夫君(仮名)もそういう生徒でした。朝になると体調不良を訴え、「学校へは行きたいけど、行けない!」と言い始め、お母さんが何度も理由を問いただしても、何も語らなかったようです。相談の中で、敏夫君は小学校の時に期間は短いですが、友人とのトラブルが原因と思われる不登校経験があることが分かりました。中学校では欠席気味の生活ではなかったので気にされていませんでしたが、後にこれが大きな原因であることが判明します。
高校から欠席日数の累積での留年の可能性を通告され、敏夫君は今後の進路の相談で相談室にやってきました。転校も含めて今後の進路についてはいろんな選択肢があることを話し、3回目の相談の際に過去の生活に話が及びました。敏夫君は小学校での友人との 事件がきっかけとなり、それから友人が自分のことをどう思っているのか執拗に気になり始め、自分の意見は言わず、友人に合わせて続けていたしんどさを語り始めました。中でも、中学校では部活は吹奏楽部希望だったのに、友人との関係で仕方なくサッカー部に所属し、行きたくもない朝練にも我慢し続けた話には驚きました。そして、ついに高校になってそのストレスを抱えきれなくなったのです。
心から楽しんで友人関係の中にいなかった敏夫君はやはり孤独でした。孤独はストレスになります。周りの誰もがそのストレスを受け止めてくれなかった、言い換えれば誰にも伝えることができなかったのです。きっと協調性のある自分を演じてきたのでしょう。不登校はそのストレスが彼の許容範囲を超えた結果でした。
第25回
相談事例④「このままでは引きこもりになるのでは?」 2016年5月号
不登校の期間の長さに関わらず、親御さんは不登校の延長線上に「引きこもり」がある、つまり我が子はこのままでは引きこもってしまうのではないかと、相談の中で必ずと言っていいほど質問されてきます。
確かに不登校生徒の増加によって「引きこもり」は増え続けていると言わざるを得ません。ある調査によれば、引きこもりをしている人の6割以上が、小学校から大学生のいずれかの 時期に不登校の経験があることが報告されています。しかし、これは「不登校になると引きこもりになる」ということを示唆しているわけではありません。そういうことはよく言われてはいるようですが、実際には不登校経験者が引きこもりになってしまう割合は1割未満なのです。つまりほとんどが学校や社会に復帰しているのです。
有名国立大学出身の父親を持つA君は、教育熱心な母親の勧めもあって小学生から厳しい進学塾に通い、中学受験を経て灘高などの進学実績のある進学校(中学)に入学しました。しかし、周りの生徒たちの学力の高さに驚き、成績は徐々に下がり始め、宿題は提出できないなどから始まって、やがて欠席が目立ち始め中学2年6月から不登校になったのです。
お母さんが相談室に来られたのは、不登校になって5カ月目でした。「お前らのせいでこうなった。あやまれ!」と再三詰め寄ってくる我が子への対応に戸惑い、このままでは間違いなく引きこもる気がすると、そして我が子のためにと思って受験も勧めたのにと嘆いておられるのでした。
このまま引きこもってしまうということは、親御さんが不登校克服に向けて確かな対応がとれずにいた場合におこる必然的な結果なのです。A君に過剰な期待をかけてきたのはなぜか、わが子のためにと思ってきたつもりが、本当は合格させることで得られる自分(親)の子育てへの満足でなかったのか、そう自問自答ながら現実を直視すれば、前号でも述べた今 からできる対応がはっきりしてくるはずです。
「A君の『お前らのせいで…』という言葉は、『もっと自由にしたかった!この僕の惨めさを分かれよ!』という悲鳴に近い必死な訴えなのですよ。」と言う私の言葉に、ようやくお母さんは心も体も疲れ切ったわが子の状況を受け止められたようです。ここから具体的な対応を巡る相談が始まったことで、A君は中学には復帰できませんでしたが、現在は通信制高校へ通っています。
第24回
「親が変わらなければいけない!」とは? 2016年4月号
私の相談室での不登校相談は、基本的に対保護者相談です。不登校生徒本人のカウンセリングについては、大学生の不登校や不登校高校生の転校などの相談の際には実施することも多々ありますが、不登校克服へのカウンセリングは保護者との対面を常に重視し、 何度もカウンセリングを継続しています。なぜなら、「子どもは家族に支えられて自立する!」と言うのが私のカウンセリングの基本姿勢だからです。
ですから、私は「親が変わらなければ、不登校は克服できませんよ!」といつも保護者に伝え励ましています。カウンセラーによっては、それはいかにも不登校の原因が保護者にあると言っていることになり、保護者を非難・批判する言葉ではないかと主張される方もいます。しかし、私は不登校の原因を保護者の過去の子育てや言動に求め、反省を促し改善することを求めているのではありません。子育てに成功も失敗もありません。強いて言えば、どの家庭でもうまくいかない失敗の連続なのです。そこに原因を求めても、解決策が存在するわけではありません。
目の前にある我が子の不登校の現実を受け入れ、今からできることは何かを明確にして、その一つ一つに取り組んでいくには、「なんでわが子だけが?」とか「何が良くなかったの?」など嘆きネガティブな思考に陥ることなく、「このままの自分(保護者)ではいけない、自分にできることがたくさんある」と意識と言動を明らかに変えていただく必要があるということを保護者に分かってほしいのです。
不登校の子どもが、自らの持つ力や自らの考えで通学できる自信を回復させるわけではありません。この連載で何度も触れていますが、「通えるかもしれない」「通ってみようかな」という小さな自信や意欲は、保護者の日々の言動に支えられてこそ生まれてくるものなのです。つまり、不登校生は家族に支えられて、今の自分に「安心」を得て初めて、大きな不安や自信喪失から少しずつ解放されていくのです。そして、学校へ行ったほうが良い」「学校へ行って友達と過ごしたい」というずっと持ち続けていた本来の想いを、通学という行動へと 一歩を踏み出し始めるのだと思います。
保護者の皆さんが変わっていただけるきっかけが、私の相談室へ来ていただくことで生まれることを期待していつも相談に臨んでいます。
第23回
不登校と発達障害③ 「発達障害を過剰に意識する我が子!」 2016年3月号
不登校の原因の背景に我が子が発達障害であることがわかったとき、親御さんはその事実を我が子に伝えるべきなのかどうか迷われることが多く、いつ、どのように伝えるべきか、あるいはそもそも伝えるべきでないのかと不安な日々を過ごされます。
伝えるべきなのかどうかと言えば、残念ながらベストな選択はありません。本人が自らの言動について疑問を持ち始めたり、ネットなどで発達障害の可能性を調べ始めたりしているようであれば、伝える時期であると判断できるかも知れません。ただし、私の今までの経験ですと、告知された本人の受け止め方への対応の難しさから判断して、高校生ぐらいの年齢に達していた方がベターと言えます。
高2の晃君(仮名)は、中2で不登校になり、中3で軽度の発達障害と診断され、たまたま両親が診察結果をリビングで話しているのを聞き、自分が発達障害であることを知りました。「友人関係がうまくいかない」「話していると変な顔をされる」など思い当たることがあり、自らの障害を強く意識し始めました。その後の晃君の発言には、必ず「僕は軽度の発達障害だから…」という言葉が頻繁に出るようになり、ポジティブな言葉は見られなくなったことで、知らせてしまったことを後悔し続けておられます。
晃君は家族の助言も聞かず、人と関わりの少ないと思える小さなキャンパスの通信制高校へ進学を決意し、現在は週に1日通学しながら進路指導も始まりました。しかし、障害ゆえに就職には不利と考えてしまいレベルの高い大学へ行こうと希望しているものの、合格できる見通しはなく大きな不安をかかえています。また、大学進学が無理なら孤独な環境でできる仕事に就くべきと、自らにプレッシャーをかけ続けています。この考えに親御さんは何とかもっと明るく考えてほしいと説得を試みますが、いつも話は平行線。一緒に将来のことを考えようとする親御さんの姿勢は大切ですが、直接的な働きかけによって今の考えを変えさせようとするのではなく、抱え続けている不安を少しずつどう和らげるのかという視点が必要です。
晃君が今一番したいと思っていることを家族で応援し新たな行動を促す、あるいは、通っている通信制高校でのイベントに参加を勧め、楽しい環境での人との関わりの体験を積ませるなど、具体的な支援・応援が不可欠です。
第22回
相談事例③「家族で出かけられない!」 2016年2月号
不登校生を抱えるお母さんは、どうしても「腫れ物」に触るような対応をしてしまいがちです。過去に突然キレたことがある、あるいは、暴言を浴びせられたことなどがあり、それが 頭をよぎるとつい対応に戸惑い、何も言わないほうが良いというような雰囲気に陥ります。また、家族全員での行動に制限がかかり、不登校の我が子の機嫌を見てから考えるということが日常化してしまいます。
正月を目の前にして、父親の実家(やや遠方)に里帰りを予定していたA君(中2・不登校)の家族は、A君の「行かない」という言葉に押され、やむなく中止の決断をしました。4ヶ月 前のお盆の里帰りも諦めています。「一人で家に残すのは不憫(ふびん)だ」「私が食事の世話をしないと、この子は何も食べないのではないか」とお母さんの心配は尽きません。確かに、宿泊を伴う里帰りは小旅行ですから、A君を残していくことがベターなのか判断は難しいかもしれません。しかし、A君の家族は、家族そろっての外食もしなくなっています。何度か「回転寿司でもみんなで行かない?」と声をかけたそうですが拒否され、いつも行きたがる妹に我慢させていることに後ろめたさを感じながら、対応に戸惑っておられます。
こういう状況の中で、A君は自分が原因であることを自覚していますが、残念ながら「僕は行かないけど、みんなで行ってきたら?」とは言えないのです。それは、そう言えるほどA君は家庭の中での自分の居場所を持ち得ていないのです。つまり、いまだ普通の会話が成り立たず、自分がどう思われているのかなどの不安を抱えたままもんもんと過ごしているのです。
私は、「じゃ、お寿司お持ち帰りしてこようか?」と気軽に言って、A君を残して出かけることを勧めました。また中止してしまうことは、「あなたの不登校が原因で、家族が出かけられない!」と言っていることと同じで、さらにA君にいらぬプレッシャーを与えてしまいます。A君が不登校ではなく、「今日は行かない」と普通に言っていたら、妹が行きたがれば多分A 君を残して気にせず出かけているはずですから、実は残して出かけることこそ普通の対応なのです。そうすれば、「僕のことは気にせず、家族が出かけていった」あるいは「出かけてくれた」と言う安堵感がA君の心に生まれるはずです。その積み重ねが大切です。
第21回
相談事例②「無気力状態が続くわが子」 2016年1月号
不登校期間が長く続き、自宅が自分の居場所として過ごしやすい空間になってきたとき、いじめを受けたことや友人とのトラブルのことなど、細々と話すようになってくるものですが、あまり語らず無気力的なままで過ごしているという相談も多数受けています。
高校1年生のA子さんは5月から不登校状態です。「行きたくない、もう行けない!」という言葉を最後に、全く登校しなくなりました。中学時代の欠席気味のときに、随分追い込ん でしまったという親御さんの後悔があって、強いて学校へ行くようには言わず、友人関係がうまくつくれないのはアスペルガーではないかとも心配されていました。何を語れば、どう 促せば、我が子が少しでもやる気になってくれるのかが親御さんの悩みでした。日常の会話は、短い言葉で断片的のようで、いろいろ聞いても「別に」「どっちでも」「考えてない」と 言った返答です。何を考えているのか、どうしようと思っているのか、まったくつかめず、しかし、毎日悠然と過ごしているように見える我が子に、時折どうしようもない不安といら立ち を覚えるという訴えです。
無気力に見える子どもは、ぼんやりと不安を抱きつつも日々流された生活をしています。でも、生活の変化に向けて何かきっかけがあるはずです。親御さんとの相談の中に子ども は自分が太っていることを気にしているらしく、ある日ボソっと「フィットネスクラブへ通いたい」と言ったそうですが、その時は、学校に行っていないのにと思い、認める気にはなれな かったと言うのです。私はそれは一つのチャンスと捉え、通うことを無条件に積極的に応援する態度で臨むことをお願いしました。
その3週間後、彼女は週2回フィットネスクラブへ通い始めました。体重計に頻繁に乗り、少しでも体重が減れば、その度にお母さんにうれしそうに報告したそうです。登校を再開す る気配はありませんでしたが、機嫌よく話せる時間も増え、家族での外食にも一緒に出掛けるようになりました。留年が決まり、お母さんは今、通信制高校への転校を勧めています。もちろん、本人もその方向で学校を探しています。そのような話ができるようになり、我が子が無気力なように見えても、実は自分の明日に想いを巡らせていることに初めて気 づいたとお母さんからメールが届きました。お母さんから相談を受けて半年が経過していました。
第20回
不登校と発達障害 ② 2015年12月号
不登校のきっかけが、友達関係でのトラブルであったり、学習についていけず自信喪失であることなどが親御さんから見ていても意外とはっきりしていることがあります。しかし、その背景に発達障害がある場合があり、今までお伝えしてきた不登校対応に加えて、親御さんに発達障害に対する理解を深めていただかねばならないことが出てきます。例えば、アスペルガー症候群いわゆるASを抱える子どもの中には、自分の興味や関心のあることに強いこだわりを持ち、極端にのめりこんで一つのことをやり続けるなどの症状があります。 興味関心がないことには見向きもしないわけですから、それによる友人とのトラブルが起こりやすいことは容易に想像していただけると思います。
昆虫が大好きなわが子が昆虫の本を読んでいるとします。もうすぐ夕食ですから、「準備ができたから、本を読むのはやめて食べなさい!」と声をかけても一向に読むのをやめようとしませんし、もちろん強く言っても動いてはくれません。そこで必要なことは、わが子の日常の行動をよく観察し、どういう傾向があるのかしっかり見極めることです。例えば、いつもその本を最後まで読んでからでないと次の行動に移らないと分かっていれば、読み終えるまで待たなくてはなりません。まず、現状をしっかり受けとめ親御さんがゆとりを持って待てるようになることです。
「読み終えたら食べてね」と声をかけるのが初期です。落ち着いた状況になった次の段階は、本を読んでいることを認めながら、「○○時になったら食べてくれたらうれしい」や「お母さんは、今、一緒に食べたいんだけど」と、読むことを中断して次の行動に移ってくれることを根気よく促し続けることです。本を読むという行動を否定することはタブーです。この継続的な積み重ねのなかで、子どもは安心を担保に、促しに応じようとする力が育っていき、今しなければならないことへの行動の兆しが生まれ始めるのです。
発達障害ではと思われたら、もちろん専門機関の診察や検査をお勧めします。しかし、その改善を専門機関に任せるだけでなく、ご家庭でも取り組む方法があることを分かっていただきたいと思います。
第19回
不登校と発達障害 ① 2015年11月号
私はこの連載で、不登校の原因は複雑に絡み合っており、親御さんがその原因を追究することには否定的な立場をとってきました。いじめ、友人との不和、学習への自信喪失などは不登校のきっかけであって、根本的な原因ではありません。しかし、原因としてひとつ 考えておかねばならないことがあります。それは、不登校の背景に「発達障害」が存在する場合です。不登校と発達障害の関係は、今では避けて通れない問題となっていますから、この連載でも機会あるごとに触れていきたいと思います。
一般的に発達障害とは、発達の遅れを抱えていることを意味し、「注意欠陥・多動性障害」や「アスペルガー症候群」、さらには「自閉症」「学習障害」などの一連の症状の総称です。この連載では、各障害の特徴的な症状を説明し、細かな対応策を述べるのではなく、発達障害と思われる事例などを取り上げ、親御さんがどう対応するべきか、その基本的なことを何回かに分けて報告したいと思います。
不登校になってしまうきっかけに、友人とのトラブル頻発と言ったコミュニケーションがうまく取れないケースがあります。「うちの子は小さい時から友達作りが苦手なんです。」と言われる親御さんがおられますが、単に気が弱く、内弁慶で自分からは声をかけるほどの勇 気がない子と思っておられるようです。しかし、実際には、言葉の遅れがあったり、感情や行動をコントロールできない、人の言葉を聞くことができない、あるいは理解しにくいなどの発達の遅れがあり、それらの結果としてコミュニケーションがうまく取れなくなりつらい思いをしている事例がたくさんあります。つまり、わが子の性格の問題と思いこんでいたことが、実は発達障害やその傾向があることに気づかないまま、あるときは励ましたり、あるときは問題を指摘したりして対応してきたわけです。もし、わが子の気になる言動が発達障害に 起因していると分かれば、おのずとその対応策は変わるはずです。
ただし、発達の遅れを抱えているからと言って「特別な子ども」ではありません。強いて言えば、学ぶことや教わることに力不足が存在していると言えます。大人側から言えば、教える難しさかもしれません。今後その克服過程を、具体的にお伝えできればと思っています。
第18回
相談事例①「死にたい!」と訴える子どもに
2015年10月号
不登校の子どもは、「学校へ行けない」自分を自覚しながら、登校していない自分を自ら肯定しているわけではありません。朝に登校をめぐってお母さんとのバトルが繰り返されていたり、将来を悲観する内容の言葉を子どもに言ってしまうなど、自宅で精神的に安定した生活ができていない時期には、子どもから「もう、僕は駄目人間!」「これからはみじめな生活や!」などのネガティブな言葉が何度となく出てくるものです。今までの連載の中で、子どものネガティブな言葉に敏感に反応してはいけないと伝えてきました。もちろん、しっかり聞き受け止めることは必要ですが、内容を否定したり、やたらと励ましたりするのはタブーであることはわかっていただいていると思います。
しかし、ネガティブな発言の究極は「もう、死にたい!」「死んでしまいたい!」という言葉です。相談者のお母さんによれば、子どもはそう言いながらため息をついていたということです。
お母さんは子どもが生まれた時からいい子に育てたい、勉強ができる子になってほしいと願い、一生懸命子どもに関わってきたのだとすれば、子どもはお母さんの望むようないい子になろうとお母さんの気持ちに沿って頑張ってきたに違いありません。従って、「死にたい!」という言葉は、「お母さんの期待にはもう応えられない!」「お母さんの言ういい子になろうとして疲れた!」という確かな意思表示だと言えます。お母さんからの期待が、自分への限りない愛情として実感できていれば、「死にたい」というはずがありません。期待をあらわにすることがお母さんにとっては愛情であっても、子どもにとっては無意識的な重いプレッシャーの連続だったのでしょう。
まず、「死んでほしくない!あなたがとても大切!」と確かな想いを伝えましょう。子どもが高校生であっても、抱き締めることが必要かもしれません。そして、期待をかけすぎていた自分を立ち止まらせ、力を抜いて自分の楽しい生活を心掛けて下さい。また、わが子と過ごす楽しいことも一緒に探して下さい。
「死にたい!」という言葉にショックを受けられるでしょうが、決して「なぜ? どうして?」と執拗に問い詰め、追い込まないように!
第17回
殴る・蹴るなどの「家庭内暴力」に対処する! ② 2015年9月号
前回は家庭内暴力の予防という観点でしたが、今回は既に起きてしまっている暴力への対応について、その対処策について述べてみます。
いわゆる初期的な暴力なら、意外と理由がはっきりしています。親御さんが本人にとって刺激になるような言動、例えば親御さんの上から目線の言葉や皮肉などが、本人が抱えるストレスと重なって暴力を誘発してしまうのです。一番理解してほしい相手に暴力は向かいます。制止できるなら制止して、理由を聞くことも必要です。また、どのような刺激が本人にとって良くないのかしっかり把握することで、次の暴力への歯止めになります。
問題は些細なことから起こる慢性化しつつある過度な暴力です。我慢していては、親御さんが怪我を負うほどの暴力へ発展してしまいます。私の相談室への相談でも、親御さんが暴力を受けて入院したという事例は毎年のように必ずあります。
まず、第三者の介入が必要です。暴力が始まれば、近くの親戚、近所の知人、学校の先生などに連絡して、自宅へ来てもらうことです。家庭内暴力には、他人の前では起こらないという特徴があり、第三者が来た時点で暴力はおさまるはずです。もちろん、警察に通報することも方法ですが、世間体もありこれはなかなか難しいかも知れません。
でも私がお勧めするのは避難です。暴力が始まったらタイミングを見て、外へ避難してください。避難したら、本人が「自分は親から見捨てられた」と感じることもありますから、まず、自宅か本人の携帯に電話して、「暴力がおさまれば帰る云々」などのメッセージを伝えることです。しかし、問題は帰宅のタイミングです。本人の明確な謝罪で帰宅してもまた同じ結果も予想できますが、この繰り返しの中で、親御さんの避難の事実を受け入れざるを得ず、暴力を振るえない諦めを本人が感じ取るようになるはずです。大変でしょうが、親御さんの踏ん張りどころです。
次回からは、相談事例を上げながら不登校にどう向き合うか、さらにお話ししていきたいと思います。
第16回
殴る・蹴るなどの「家庭内暴力」に対処する! ① 2015年8月号
前回は不登校生徒の家庭内での暴力、とりわけ器物破損等への対応でしたが、今回からは肉体的な暴力への対応について触れてみたいと思います。
家庭内暴力の延長線上に、他人にキレたり暴れたりして暴力をふるってしまう反社会的(犯罪)行為があるように思われがちですが、基本的には無関係と考えられます。家庭内 暴力は、もちろん家庭内での暴力的な行為ですが、外で暴れることは決してありません。外ではおとなしいと評判だった我が子が、暴力的に豹変(ひょうへん)してしまうのです。そ こには、起こってしまう条件や環境のようなものが存在します。
一つは閉ざされた家庭空間です。不登校が長引くと本人だけでなく、家庭全体が外との交流などが薄れ、他人や第三者が介入できないような閉ざされた雰囲気と状況に変わっていきます。親戚の人がやってくる、近所のおじさんが頻繁にやって来るなど、家庭が開放的であればある程、家庭内暴力を防ぐ手立てが、おのずと存在することになります。なぜなら、彼らは他人の前で暴れることはありえないのですから。
次に、不登校生徒は同年代の友人とつながっている関係が徐々に希薄になり、社会的な成長はある意味で止まるわけですから幼稚化してきます。幼稚化が進めば、家庭内での 会話は極めて乏しいものになります。執拗にべたべたして甘えてくることなどを認めていると、やがて要求などを通すために、あるいは不満をぶつけるために、小さな暴力を始めます。けがしない程度に蹴ったり、軽く殴ったりしてくることを、大したことはないとしっかり拒否しないでいると、これが家庭内暴力の初期的なものですが、やがて暴力は激しさを増し、 慢性的なものになります。
確かな予防策はありません。ただ、家庭内暴力を生むこの2つの土壌を回避することが、可能な予防策といえるのではないでしょうか。次回は、起きてしまっている家庭内暴力への対応についてお話します。
第15回
暴れて物を壊す我が子への対処は? 2015年7月号
不登校の我が子を前にして親御さんが対応にとても困っておられるのは、我が子の暴力的な行為です。家の壁や家具を壊したりする器物破損行為、親御さんや兄弟への殴る蹴るなどの直接的な暴行行為、そして言葉の暴力があります。今回は器物破損行為への対処について触れてみます。
子どもがむやみやたらと暴れることはありません。必ず何かきっかけがあるものです。執拗(しつよう)に登校のことを言われたり、将来の不安を煽られたり、唯一の救いのゲームを取り上げられたりした時、自分の思いや考えが伝わらず、また伝える方法を持たないが故に「不安やイライラを分かってほしい!」という強い思いを、物を壊して訴えるのです。
まず、理由を聞きましょう。行為を叱ることはいつでもできます。明確な理由を伝えてくれば、その理由への理解を示さねばなりません。行為がやむなしとか仕方ないと認めるのではありません。あくまでその理由と気持ちに「分かった!」という同意が必要です。次に、その後、あるいは理由が明確でない場合には、「こういうことをされると、本当に悲しい、つらい!」という親御さんの気持ちを必ず伝えて下さい。暴力の理不尽さや非難で叱っても、要らぬバトルが起こり続くだけです。子どもはやり過ぎている自分を自覚しています。ですから、叱るより親御さんの切なる悲しさ、わびしさを切実にしっかり伝えてほしいのです。
壊れた物はできれば修理しましょう。子どもは、やり過ぎた自分を十分に認識して内的な反省をしていますが、壊れたものを見続けても新たに反省し、言葉に出すわけではありません。見せしめのように残しておくことは賛成できません。ただし、子ども部屋で壊した自分の物は、本人が「修理してほしい」と言うまで、そのままでもいいでしょう。
しっかり毅然と対処できれば、破損行為は意外と早く収まります。
第14回
『笑顔!明るさ!』それも登校刺激! 2015年6月号
5月になると相談が増えてきています。中3で不登校であったがなんとか高校進学はできたのに、入学式以降数日登校しただけで、また不登校になっている。あるいは不登校気味であったが留年を免れた高校生が進級後の始業式以降、全く登校できていないなど、新学期の環境の変化が我が子に何か良き結果をもたらすのではないかという親御さんの期待は、残念な結果に終わっています。これは「心機一転!」というような環境の変化への期待は、不登校克服とは無縁であることを示唆しています。今回は家庭内の雰囲気も登校刺激になることに触れてみます。
その例として、通信制高校へ進学したり転校したりした生徒が、週2、3日の通学を続け、自宅でレポートをしたり、昼夜逆転が無くなったりして、生活そのものが好転している事例があります。確かに、通信制高校は通学日数(授業時数)も少なく、教室でも少人数で過ごすことができるなど全日制とは全く違い、不登校経験者には通学しやすい環境と条件があります。しかし、子どもが通学を続けられているのは、その環境・条件だけではなく、通信制高校へ進むことを決意した我が子を応援しようとする親御さんの姿勢がはっきりと生まれているからです。家庭内に応援の雰囲気があふれているのです。
できれば全日制でみんなと同じように通ってほしかった、通信制なんかで大丈夫だろうかと不安の尽きなかった親御さんは、我が子のためにとその想いをぶつけてこられたでしょうし、重い暗い雰囲気が漂っていたに違いありません。全日制通学を基準としていた自分の想いを、親御さんは確かにリセットされたのです。「応援しよう!」という親御さんの明るさや笑顔と「応援してもらっている!」という子どもの安心感の同居が、子どもの通学の継続を促しています。
誤解なきようにお願いしますが、通信制高校こそが新たな進路と言っているのではありません。この連載(HP掲載)を読み直していただき、不登校克服の鍵は、家庭内にあるということを再認識していただきたいのです。
第13回
再び「普通の会話」の意味 2015年5月号
不登校の時間的経緯に伴って、子どもの状態も変化してきます。情緒的な不安定、頭痛・腹痛などの身体病状、食事や睡眠の乱れなどに対応して安静と休息を心がければ、精神的には安定し、不登校のままでも日常生活が回復します。学校のことにさえ触れなければ、穏やかな生活が戻ってくるものです。この時期を、不登校の安定期という人もいます。
この状態が続いている中で相談を受けると、親御さんの態度に、我が子の将来への不安は大きいままですが、「なんとしてでも登校させよう!」とか「この子の未来はない!」などという悲壮感は薄れ、意外とサバサバした気持ちがうかがえるのです。「今すぐに登校するのは無理だろう」という良い意味での諦めがあります。
欠席遅刻気味の不登校前兆から随分長い間、我が子の不登校と向き合ってきて、親御さんの気持ちの中の焦りやストレスがリセットされてきているのです。つまり、親御さんの日常の態度に、実は穏やかに振る舞える変化が出てきているのです。ここまで来るまで大変だったでしょう。しかし、この状況は、我が子が自信回復に向けてのエネルギーを蓄積する時期でもあります。
リセットされた親御さんの態度の変化は、子どもが「自分の不登校を受け入れてくれている」という親御さんが敵から味方になってくれた実感に変わってきます。ここまで到達しない限り、不登校克服はそう簡単に望めないと言っても過言ではありません。この状態になれば、遊びや趣味に奔走しながらも、子どもはやっと「学校へ行ったほうが良い?」「勉強不安やけど高校へは行きたい!」などとポジティブなことを親御さんに伝え始めます。そして、初めて何をどう援助すればいいのか、その方向が明らかになってくるものです。
私が連載の当初に「普通の会話を心がける」と述べましたが、不登校の初期の時期に、この安定期のような状態を意図的に早期に作り出す最も有効的な方法が「普通の会話」なのです。
第12回
新学年・新学期に備えて 2015年4月号
いよいよ新学年・新学期が始まります。不登校生徒がこの時期よく「新学年になったら行くよ」とか「4月からは頑張るわ」と親御さんに言ってきます。学年が変わる、クラスメンバーも 変わる、担任も変わるなど、生徒を取り巻く学校での環境は大きく変わりますから、本人もその環境の変化に期待し、元来「学校へ行ったほうが良い」とか「このままではよくない」とは 思っていますから、こういうポジティブな言葉が出てきます。
親御さんにしてみれば、環境の変化と本人の前向きな言葉に期待して、ひょっとしたら新学期になれば本当に通ってくれるんではないかと思われるでしょう。意欲が出てきた我が子に過度な期待が生まれ、これが我が子の不登校を少しゆとりを持って接してきた親御さんの態度をまた元に戻す結果を生んでしまうのです。つまり、「本当に通えるの?」「大丈夫?」 「またしんどくなるのと違う?」と執拗に確かめたくなり、我が子に迫ってしまいます。
「行くよ!」と言っているからといって、子どもの中に生まれている意欲は、確固たる自信ではありません。「よーし、今日から行くぞ!」と一大決心をして、不登校から抜け出した生徒は 誰もいないのです。「行けそうな気がする」「行ってみて大丈夫かどうか試してみたい」なその程度の小さな、本当に小さな自信が心の中に育ってきているのです。ですから、その小さな自信の真偽を確かめるのではなく、「前向きな気持ちになってきたね。お母さんはうれしいわ!」「そういう気持ちになってきたんだ。何か手伝えることがあったら言ってね!」と短く 明るく返しましょう。もし、また通えなくなってもお母さんの態度は今まで通りよ!と言うぐらいの気持ちを持って我が子のポジティブな発言に対応しなければなりません。
子どもは二度と失敗したくないとプレッシャーを感じています。親御さんが小さな自信に迫ってしまっては、子どもの心はまたこのプレッシャーでいっぱいになってしまうのです。
代表理事 丹羽 豊NPO法人NIWA教育相談室
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【本部相談室】〒543-0021大阪市天王寺区東高津町9-23
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第11回
中3不登校生の進路選択を考える!② 2015年3月号
中3不登校生の高校進学(進路選択)についての続編です。スクーリングの実施形態やレポート指導の在り様が、通信制高校の選択には重要な視点になることは前回お話した通りですが、もう一つのポイントは友人関係づくりです。とりわけ、友人関係がうまくいかず不登校になってしまったという経験があれば、高校でうまく友達がつくれるのか、本人も保護者も不安が大きいことでしょう。
相談に来られた保護者の方は、まず同級生がどれくらいいるのか、その学校の規模(生徒数)を気にされます。つまり、同じような状況の生徒が多くいるほうが友達ができやすいと思っておられるのです。数字的な確率で言えば、確かにそうかも知れません。しかし、不登 校経験の生徒は、自ら関わって友達を作ろうとはしません。そうしたいと思っていてもできないのです。ですから、いつまでも一人寂しく授業を受けている光景が続きます。そして、やがて「楽しくない」と、欠席傾向が始まるのです。
したがって、学校選択のポイントとして、その学校が友達づくりなどに積極的に取り組んでいるかどうかがとても大切です。その目安として、学校で行われるイベントの回数が重要です。合宿や修学旅行などの大掛かりなものでなく、また、特別活動の単位取得とは関係のない学年ごとなどに「小さなイベント」がこまめに実施されているかどうかです。友達は厳しい学習関係でできるのではなく、楽しい明るい環境の中で幾度と関わりあうことで、会話などが弾み、友達への一歩を感覚的につかみ始めます。
「友達ができそう!」「あの人となら、友達になれそう」というような思いが、心の中に生まれてくることが、友達づくりのスタートです。一緒に遊ぶ、運動する、見学に行く、ゲームをする、歌を歌う、そんな小さな活動の積み重ねの中に、友達づくりの大きなチャンスがあるのです。
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第10回
中3不登校生の進路選択を考える! 2015年2月号
高校受験が迫って来ました。今回は、高校進学を控えた中3生の不登校生徒の進路選択に言及してお話ししたいと思います。
全日制公立高校の受験では、内申書が重視されます。中3のこの時期に不登校の生徒は、欠席時期や日数にもよりますが、残念ながら内申書が受験に有利になるような内容になるわけではありません。したがって、進路選択は必然的に通信制高校などに限定されてきます。通信制高校を選択肢に含んだ場合、問題となるのは数ある通信制高校の中からの進路先の決定です。
通信制高校のパンフレットやHPを見ながら、どの高校が良いのか、そうたやすく判断できる根拠はありません。通信制高校は、いわゆる授業としてのスクーリングとレポート提出で卒業に必要な退位取得が可能になるシステムですが、その方法は学校によって多様な違いがあります。その違いをいくら比較検証してみても、ベターなあるいはベストな選択は困難でしょう。
したがって、どういう方法を採用している学校であれば我が子の通学が期待できるのか、子どもの側からの視点が必要です。レポート提出を例にしますと、1年間で約100枚のレポート(問題集のようなもの)を自宅でほとんど自学自習をさせるところもあれば、映像授業とセットでのレポート作成、あるいは塾の個別指導のように丁寧に指導しているところもあります。どの方法なら我が子のレポート提出が可能なのか、その視点が選択のひとつの鍵です。スクーリング方法も同様です。友人関係で言えば、イベントの質や量も選択の鍵です。生活範囲を広げる意味で言えば、本当は少しは遠い方がいいかもしれないと考えることもできます。
最後に評判の良い学校、人気のある学校ではなく、お子さんに合う学校選択を!
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第9回
「受け入れる」ことと「認める」ことの違いとは?③ 2015年1月号
前回に続いて「受け入れる」ということについて、もう少し考えてみたいと思います。「受け入れる」ということを、まず我が子の主張や意見に同意すること、あるいは、現実を認識し納得することなどと言ってきましたが、「もう我が子のことで、ネガティブな心配をしないと割り切ること」と言い換えることもできるでしょう。
先日、相談室に高校1年生(女子)の不登校相談がありました。我が子に復学を言い続けたそうですが、ついに本人が「もう今の高校をやめる!転校したい!」と言い出したため、何とかしないといけないのでその進路や方法についての相談でした。全日制からの転校は、定時制か通信制高校が原則ですから、そのシステムや実情について説明しましたが、お母さんから出る言葉は、マイナスのことばかりでした。もちろん、復学がお母さんの強い希望です。
後日、本人が「通信制高校の説明を受けたい!」と一人で相談室にやってきました。その前日のお母さんのメールは、「説明を聞いて、復学か転校を考えさせたい」ということでしたが、実はすでに本人は転校を決意し、お母さんに何度も伝えているのです。しかし、お母さんは全く受け入れていないのです。つまり、我が子の判断にひとまず従い、互いにこれからを考えていくという話し合いや雰囲気になっていないのです。心配で心配で、その心配から逃れられないために、お母さんからすれば「転校したい!」は現実からの逃避という結論に達するのです。ですから、我が子がやり直して新たな生活を過ごしたいという希望を持ち始めたことに気付くことはできません。
ネガティブの連鎖が必要な対応を誤らせます。開き直ることも必要なんです。
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第8回
「受け入れる」ことと「認める」ことの違いとは?② 2014年12月号
不登校の生徒は学校へ通う気力を失っています。当然、朝は普通の時間に起床することはできません。起こしてもなかなか起きてこず、時には「うるさい!」と起こすことさえ拒否されてしまいます。起こさなければずっと寝ているのではないか?、こんなことがいつまでも続くのではという保護者の不安は消えず、無理してでも起こすべきなのか、起きて来るまで待つべきなのかと相談されることがよくあります。失礼な言い方になりますが、こういう相談を寄せられるのは、残念ながら我が子の不登校をいまだに「受け入れられない」保護者に多いのです。
我が子の不登校を受け入れることは、「我が子が学校へ行ける状態ではない」いう現実を認識し納得することです。強いて言えば、明日や1週間後に学校へ行ける状況にはならないレベルのところに我が子が置かれているということを理解することです。確かに悲しい現実ですし、つらい思いをしている我が子がふびんでしょう。しかし、受け入れることができれば、ここから生活改善をスタートさせればという意識が生まれます。我が子に寄り添った再通学に向けての取り組みが始められます。
一方、受け入れることができなければ、「なぜこうなってしまったのか?」「このままではいけない!」と考え続けます。ですから、通学している生徒と同じような生活をさせたいと、朝は無理に起こしたり、昼間は少しでも勉強をさせたいと、強制したり愚痴ったりしてしまいます。
通学意欲のない子どもの朝はだるい体の状態です。でも、不登校を受け入れても、生活習慣を考えればいつまでも寝ていることは「認める」わけにはいきません。「朝ご飯食べようよ!」「体が心配だから、起きてご飯ぐらい食べてね!」と声をかけ続けましょう。その継続が大切です。
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第7回
「受け入れる」ことと「認める」ことの違いとは? 2014年11月号
私はこの連載でよく「まず受け入れることが必要」とか「受け入れる対応が大切」と何度も言ってきました。保護者の方は、我が子の行動や言い分をなんでも受け入れてしまえば、不登校の事実やゲームの毎日を認めてしまい、わがままを許すことにつながるのではと危惧されてしまうでしょう。
「受け入れる」ことと「認める」ことは違います。「受け入れる」とは、我が子の行動や言い分に理解を示すということです。つまり「分かってほしい」と思っている我が子にはっきりと「分かっているよ!」と同意することです。一方「認める」とは、同意した内容を具体的に支援することです。
例えば、深夜までゲームに没頭している我が子の様子を見て、「なぜ、学校へ行こうとしないのか?」「こんな生活でいいと思ってるの?」と考えてしまいますが、この嘆きが続く限り 我が子の現状を受け入れることはできません。子どもは学校へ行けないほど自信を失い、また、何かする意欲が湧いてこないのでゲームに没頭してしまうのです。それほどストレスを抱え疲れ切っていると理解を示し、納得することが受け入れるということです。これは、仕方がないとあきらめることでもありません。
しかし、だからといって何も言わなければゲーム生活を認めたことになります。子どもは深夜までゲーム漬けになり、昼夜逆転の生活が始まるわけです。健全な生活をしてほしいと願うのですから、まず、深夜のゲームは毅然とやめさせなければなりません。ゲームをせざるを得ない我が子の状況を理解しても、深夜のゲームは認められないという保護者の一線を引いた言動が必要です。そして、次に昼間のゲーム生活の改善に取り組むのです。
次回の連載でも、もう一つの例を上げて、受け入れることと認めることに触れたいと思います。
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第6回
我が子にキレられたり暴言を吐かれたら? 2014年10月号
不登校の我が子の言動に対してどのように対応すればいいのか、様々なケースがあります。普通の会話を心がけなければと分かっていても、キレられたり暴言を吐かれたりしては、どう接していいのか分からなくなり、やがて腫れ物に触るかのような、重々しい雰囲気の接し方に変わります。
なぜおとなしい性格だったはずの彼らが、キレたり暴言を吐いたりするのでしょうか? まず、彼らは自分の不登校を誰よりも気にしています。もし両親の言葉が、不登校そのものへの非難であったり、「これからどうするの?」と詰め寄ったりすれば、彼らは自分がまた責められていると思い、最も気にしている負の部分にもうこれ以上触れられたくないという強い思いから、キレたり暴言を吐くか、最後には自虐的な発言をするのです。「もう、わたしのことは放っておいて!」「もうどうでもいいね!」と。つまり、彼らはもうこれ以上傷つきたくないと、その場は自分を守ろうと必死なのです。「あなたのために言ってるの!」「親に対してそういう態度は許せない!」など、両親がいくら訴えても彼らには届きません。
受け入れることと、認めることには違い(次回11月号の連載で解説)がありますが、暴言であっても我が子が言っている内容には、「そう思っているんだ」「そうだったの」というふうにまず受け入れる対応が大切です。彼らは決して「もうどうでもいい」などとは思っていませんから、自虐的な言葉が出れば、ひとまず話はそこで打ち切りましょう。また数日後に話せばいいと思ってください。キレたり暴言が出るのは、話し合いがすでにバトルに変わってしまっているからです。自分の主張をわかって欲しいと互いにぶつけ合うだけで、相手を受け入れる姿勢はすでに消えています。バトルを続けても何も生まれないんです。
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第5回
不登校生徒への普通の会話とは?② 2014年9月号
不登校になってしまった子どもは、ゲームなどに明け暮れている生活をしていても錯綜(さくそう)する毎日を送っています。登校できない自分の現実を認めれば認めるほど、自分の将来がここで終わってしまったかのように感じたりしているものです。ですから、親御さんに時折ぶつける言葉も、「このままみんなに笑われる人生になる」「自分はダメな人間や。誰も友達になってくれるわけがない」などネガティブな内容が多いものになります。
そう言われると、親御さんはつい「そんなことないよ!」と言ってしまうものです。お気持ちは分かりますが、否定はタブーです。まず、「あっそう、そう思ってるんだ!」と同意してください。同意して最後まで聞くことです。親御さんの意見は控え、すべて受け止める態度が大切です。否定すれば「私のことは全然分かってないやん!」と必ずバトルになります。バトルから良い結果は生まれません。子どもはネガティブな気持ちを伝えることで、自分のしんどさを分かってほしいと訴えているのです。ネガティブな言葉それぞれに対応する効果的な言葉などありません。
「そんなことないよ!」という言葉は、「あれから考えたけど…」と2~3日してから思い出したように伝えればいいんです。そういう親御さんの姿勢の延長線上に、子どもがポジティブな話をし始めるきっかけが存在します。
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第4回
不登校生徒への普通の会話とは?① 2014年8月号
不登校を克服し再登校を促すには、まず家庭内での普通の会話のやりとりが重要であることは前回に述べました。普通の会話とは、「今日は行くの?」「友達が待ってるよ!」などの登校に関わることには触れず、「おはよう」「元気そうやね」などの親子が交わす日常の当たり前の会話です。親は心配のあまりつい登校に関わることを言ってしまいますが、言えば言うほど、子どもは「行きなさい!」と命令されていると感じ、自分のつらさを理解してくれない親に失望するのです。
大切なことは、我が子の不登校を受け入れ、「あなたのしんどさを理解しているよ!」という共感の信号を出し続けることですが、「分かってるよ!」などの直接的な表現はタブーですし、腫れ物に触るような気遣いも不要です。つまり、親は不安や心配を表情に出すことなく、明るく我が子に接することです。難しいですが、その継続が、「自分はどう思われているのか?」など心配し続ける子どもの不安を確かに少しづつ和らげます。深夜近くまでゲームを続けるようでしたら、特別扱いすることなく、普通に注意してやめさせます。そうした一貫した親の会話と態度に、子どもは親がどれくらい自分の味方になってくれているのかを感じ取るのです。やがて、必ず子ども自ら通学などに触れる発言をします。ここまで、我慢強く!です。
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第3回
まず、普通の会話を心がける!② 2014年7月号
不登校の子どもが自らの力で不登校を克服することを保護者は望んでいます。今、この状況を乗り切ってくれたら、我が子は大きく成長するはずと期待するのも無理はありません。しかし、「よし、頑張って明日から登校しよう!」なんていう決意を抱いて登校をし始める子どもは残念ながらいません。失われた自信や自ら動く力が、何かのきっかけで突然のように湧いてくるのではないのです。
「少し登校できそうな気がしてきた」「明日は登校してみようかな?」と彼らの中に少しの一歩を踏み出す気持ちが出てきたとき、それが不登校克服の兆しなのですが、この思いを抱いてくれるようになるには「安心」という担保が必要です。不登校の子どもは「もう二度と同じ失敗はできない」というプレッシャーも抱えていますから、「また行けなくなっても、お母さん(お父さん)は、自分の気持ちを分かってくれる」という親への確信、これが安心の担保です。
前回も触れましたが、「普通の明るい会話」は、まさにこの思いを育てる最も有効な手立てです。なぜなら、彼らはストレスで疲れ切った自分の状況を、誰よりもまず親に理解してほしい、自分の味方になってほしいと、無言で訴え続けているからです。次回は、この普通の会話のノウハウをお伝えします。
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第2回
まず、普通の会話を心がける! 2014年6月号
不登校になってしまうと、子どもは時間を持て余します。ベッドに潜り込んで部屋から出てこないで寝ている。依存症ではないかと疑うほど一日中スマートホンのゲームに熱中している。など、保護者から見れば、不登校を深刻に受け止めず、怠けてさぼっているのでなはないかと思ってしまうものです。しかし、彼らは 「学校に登校したほうが良い」「このままでは、やばい」「こんな自分のことをお母さんや友達はどう思っているだろう?」と悶々と思いふけりながらも、ゲームなどをしていないと一日を過ごせないのです。どんな過ごし方をしていようが、彼らが安堵(あんど)の中で何も考えず過ごしているのではないという我が子の不登校への理解がまず必要です。
従って、このままならどうなるのか、学校へは行くのが当然など、保護者から話しかけたり説得しようとしたりするのはタブーなのです。まず、何よりも普通の会話を心がけなければなりません。普通の会話とは、我が子が学校へ行っていようが休んでいようが、そのことに関係なく日常的な会話を笑顔で明るく交わすことです。それが、「あなたの苦しみ、しんどさは理解しているよ!」という子どもへのシグナルになります。不登校克服のスタートは、ここから始まります。
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第1回
原因の追究よりも「自信」を育てる親へ! 2014年5月号
不登校のわが子を前に、親は「なぜ?」と嘆いてしまいます。でもそこに明確な答えはありません。原因は複雑に絡み合っています。環境の変化、友人・親子関係など、子どもが日々の生活の中でストレスを抱え続け、やがて飽和状態になり、もう自ら動く気力や自信をなくした時「助けてほしい!」とシグナルを出します。それが不登校なのです。彼らは学校へ「行かない」のではなく、「行きたくても行けない!」状態なのです。
もし、不登校の原因を突き詰めたとしたら、それは最後に子育てに行き着くかもしれません。なぜなら、不登校になってしまった子どもたちには、「感受性が強く、気が弱く、プライドが高い」という共通の傾向が見受けられるからです。これは、子育てが間違っていたということではなく、言い換えれば「周りに気を遣う、頑張ろうとしている優しい子」に育っていると言えるからです。
大切なのは原因を探そうとすることではなく、子どもの心の中に自ら動く気力や自信をどう育てるかです。それができるのは、まぎれもなく「保護者(親)」です。
この連載では、不登校克服に向けてご家庭で何ができるのかを具体的にお伝えしていきたいと思っています。
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